ARTIST PICK UP
THE YELLOW MONKEY
前作『パンチドランカー』から2年5ヶ月ぶりにリリースされる
オリジナル・アルバム『8』。
THE YELLOW MONKEYが遂に新境地に降り立った。
(初出『Groovin'』2000年7月25日号)
THE YELLOW MONKEYがニュー・アルバムをリリースする。前作アルバムからなんと2年5ヶ月ぶりとなる『8』は、現在のTHE YELLOW MONKEYの意欲作であり、自信作であり、実験作である。そして間違いなく"大傑作"である。
前作『パンチドランカー』をリリース後、彼らは1年をかけて全国113本のコンサート・ツアーを敢行した。音楽業界の流れは速い。1年間ライヴという活動に専念することは、ある意味冒険とも言えるだろう。しかし、彼らは日本全国をまわった。ツアー中彼らのなかでどのような変化があったのかは知る術もないが、その後3ヶ月のオフ期間を経て制作された「バラ色の日々」は明らかに"何か"が違っていた。もちろんツアーの影響もあるだろうが、それだけではなかった。
実はツアー終了後、彼らには今後どういう音楽を作るべきだろうか?という不安があったという。個人的な意見だが、アーティストにはそういった不安や疑問は常にあると思う。それをプライドや過剰な自信でやり過ごす人も多いだろう。しかし、彼らは「プロデューサーとのコラボレーション」という初めての実験的試みによって、バンドを見つめ直す機会を得ていたのだ。「バラ色の日々」での朝本浩文とのコラボレーションにはまず驚かされたが、その後も森俊之、笹路正徳、THE SAINTと、複数のプロデューサーとのコラボレイトが続いた。そうして出来上がった3枚のマキシは実験色の強いものになったが、THE YELLOW MONKEYの本質が損なわれることは決してなかった。むしろ、彼らの持ち味が際だっていたという点で、この"実験"は大成功だったと言えるだろう。
最新シングル「パール」は吉井和哉によるセルフ・プロデュースとなった。複数のプロデューサーとのコラボレーションで吸収したエッセンスを凝縮し、ライヴ感溢れる勢いのあるロック・サウンドに仕上がった。パワフルかつメロディアスなこの曲は、今後のTHE YELLOW MONKEYの方向性をも示唆し、アルバムの予告に相応しいスピード感を持っている。
そして、いよいよリリースされる本作『8』は、既に発表されたシングル曲、カップリング曲がアルバムの半分近くを占めるが、そのほとんどが今作のアルバム・プロデュースを担う吉井和哉のもと、リレコーディング&リミックスされている。また、そういった作業も含めて、このアルバム制作には通常の倍以上という膨大な時間が費やされた。しかし、ハードなスケジュールの中でも、作業の最終段階まで彼らは妥協することが一切なかったと聞く。そうして出来上がったのはこの2年5ヶ月間のTHE YELLOW MONKEYの音楽活動の集大成ともいえる、メンバー曰く"ドキュメンタリー的な作品"。また"このアルバムによって今後の方向性やバンドの本質を見極められた"という。その発言も今作を聴けば、すべて納得出来ると思う。それだけのクオリティとオリジナリティと彼らの音楽との葛藤が存在するアルバムである。私はロックを形容する言葉は、カッコいいか、そうじゃないかに尽きると思っているのだが、このアルバムは"最高にカッコいい"と言い切れる。
今作で間違いなく彼らは新境地に降り立った。そして、THE YELLOW MONKEYが加速度を増した。
Text by 鮎川夕子(編集部)
『8』
CD
BMGファンハウス
FHCF-2501
¥2,913(税抜)
7月26日発売
連続リリースされた4枚のシングル「バラ色の日々」「聖なる海とサンシャイン」「SHOCK HEARTS」「パール」を収録した8枚目のオリジナル・アルバム。プロデュースを吉井和哉が担当しているのも聴きどころのひとつ。
【THE YELLOW MONKEY公式サイト】http://www.theyellowmonkey.com/