MIHO

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MIHO

「Life」「OVER/ESPERANZA」でシーンに衝撃を与えてきたMIHOが
待望の1stアルバムをリリース。
時代が求めているものは何処にあるのか?〜鍵はMIHOが握っている〜

(初出『Groovin'』2000年7月25日号)

miho-A.jpg 本当に存在するのかわからないけど、その存在を信じたいもの。例えば神様だったりとか、愛情だったりとか。すごく不確かなんだけど「きっとあるよ」って信じる事によって、強くなれたり、優しくなれたりするもの。MIHOの音楽はそんな存在に近いような気がする。
 例えば、すでに発表された2枚のマキシ・シングル「Life」「OVER/ESPERANZA」は間違いなく鼓膜を振動させる"音"として存在するのだけど、聴いた後に残る感覚が"夢かうつつか"という感じなのだ。それはきっとMIHOのヴォーカルによるところが大きいのだと思う。ふわふわと優しく漂う歌声は夢のなかにいるような感覚。そこにあえてHIP-HOPというリアルで現代的なエッセンスが加わる事によって、まさに夢と現実を行き来しているような独特の浮遊感が生まれたのだろう。
 こういった独自の世界をアルバムでどう表現してくるのか?オリジナリティのある音楽だけに当然シーンの注目度も高いだろう。事実、MIHOのヴォーカルも含めたSteady&Coの音作りにはクラブ・シーンからも熱い視線が注がれている。しかし、既にリリースされた2枚のマキシで、その音楽性に"新しい風の匂い"を感じていた私は"絶対に期待を裏切らない作品になる!"という確信を持ちながらこのアルバムを心待ちにしていた。
 そうしてやっと届いた『DROP by DROP』は大きな期待に応えて余りあるものだった。例えば「Dear Place」は軽快なトラックに乗った、やさしくメロディを慈しむようなMIHOの歌声が心地よい1曲。この曲ではAKEEMのラップを大きくフィーチャーしているのだが、そうしたHIP-HOPの要素と情緒感あふれるメロディ・ラインとのバランスも絶妙で、メロウで温かいMIHOのヴォーカルに対する攻撃的でクールなスパイスの役割を果たしている。このあたりのセンスは、他アーティストとのコラボレートを通じていろんな音楽のエッセンスを吸収しているSteady&Coならでは、といえるだろう。
 そしてやはりMIHOのヴォーカル。今作に収録されている「果てしない世界」には、誤解を恐れずに言えば"賛美歌"を聴いているような気持ちにさせられる。もちろん歌唱法だとかの問題ではなく、あくまで感覚の部分。最近の音楽シーンに氾濫する小手先のテクニックしか印象に残らない歌ではなく、なによりも"気持ち"があってこその歌、だからかもしれない。そして、そこには信じる者の強さがある。この曲の中で"時は過ぎて行く 君はどこへ行く 明日が怖いなら 共に行こう"とMIHOが歌えば、彼女に導かれて「果てしない世界」に行けるような気がしてくる。そんなMIHOのヴォーカルの不思議な力を、私は改めて信じてみようと思った。
 今作には、もちろんデビュー曲「Life」、両A面となった2ndマキシからBOY-KENをMCに迎えた「OVER」、降谷建志、スケボーキングのSHIGEOとCO-KEYのラップをフィーチャーした「ESPERANZA」も収録されている。1stアルバムとは思えないほどのクオリティだが、今後の可能性もしっかりと感じさせる作品になった。今までにもなく、そしてこれからも唯一無二の存在となる音楽、"MIHO"というジャンルが確立された今作を絶対に聴き逃さないで欲しい。

Text by 鮎川夕子(編集部)

『DROP by DROP』
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CD
ポニーキャニオン
PCCA-01459
¥2,913(税抜)
8月2日発売

デビュー曲「Life」2ndマキシ「OVER/ESPERANZA」を収録した待望の1stアルバム。サウンド・プロデュースはもちろんSteady&Co(Dragon Ashの降谷建志+BOTS)。MIHOのヴォーカルの魅力を再確認できる全12曲。


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