19

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19

1stアルバム『音楽』から1年。
若い世代の共感を呼び続ける19が放つ待望の新作は、
無限大の可能性と無限大の希望がつまった、『無限大』なアルバム!

(初出『Groovin'』2000年7月25日号)

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 「急増する少年犯罪」「子供達の狂気」…テレビも新聞もティーン・エイジャーの引き起こす凄惨な事件の報道に忙しい。その原因を究明しようと躍起になっている大人を尻目に、また新しい事件が起こる。まだまだたくさんの暗闇がこの世には存在している。本当に個人的意見で申し訳ないが、彼らは「生」の実感がないまま生きているんじゃないか?と私は思う。自分が生きていることを感じられないので、他人の生なんて理解できるはずもない。モノ同様なのだ。
 そんな悲しい闇が点在する時代にも差し込む光があった。それもすぐ側にある「音楽」の中に。"19"一奇しくもティーン・エイジャーと呼ばれる最後の年齢を記号的に名乗る若者の音楽には、溢れるほどの「生」の感触がある。"今、ここに、生きる"ことの素晴らしさを実感させてくれる。
 けんじ、ケイゴ、2人の心の共鳴が音楽に形を変えるとき、とてつもないパワーを持って人々の胸に突き刺さる。それは決して、上っ面だけの安っぽい人生応援ソングではないし、ただ空回りの自己満足パフォーマンスでもない。ダメな自分、弱気な自分、迷っている自分をさらけ出し、それでも「頑張ることはカッコ悪いことじゃない」と訴えてくる。その真摯な姿に自分を重ね、共感した人々は少なくないはずだ。
 私もその中の1人として19の作品を追ってきたのだが、やっと届いたアルバムを聴き終えて、まず、まったく変わらない19に安心した。もちろんサウンド面では着実に変化しているし、今までにないアプローチの楽曲もある。だが、彼らの音楽に対する取り組み方や姿勢は、次々とヒットを飛ばす今も19が結成された頃と変わらないんだろう。とても真っ直ぐで正直。嘘がない。それに今どきの若者がすっかり忘れてしまった"懸命さ"がヒリヒリと伝わってくる。
 そして、私がこのアルバムを通して感じるのは"生々しい人間の感情"。例えば「今、つかれた今」はエフェクトをかけたやや気だるいヴォーカルとハードなギターの対比が印象的な曲。歌詞も曲調も多くの人が抱いている19のイメージとはちょっと違うかもしれない。それは落ち込んだ時に"マイナスの気持ち"が揺れる感じに似ている。「スマイル」では軽快なスカのリズムに乗った爽快なメロディが、歌詞のとおり"今、走り出そう"という気持ちにさせる。「熊じいちゃん」を聴くとストーリー性のある歌詞とダイナミックなメロディに引き込まれ、自然と大事に思っている人の死に直面した自分の経験と重ねあわせ、少し哀しくなってしまう。また「以心伝心」は誰かを思って気持ちの中にそっと明かりが灯るような、切なくてあったかくなるバラード。そんなふうに1曲1曲が様々な人間の感情を伴って生き生きと存在している。そして、何より私たちが忘れかけていた大切な感情も…。それが何なのかは、実際にアルバムを聴いて感じて欲しいと思っている。
 このアルバムを彼らは『無限大』と名付けた。今の19にとてもふさわしいタイトルだと思う。彼らの音楽の可能性も無限大、彼らの音楽に触れる若者の未来も無限大。だけど19が伝えたかったのは、生きているって事はそれだけで無限大の価値と可能性があるんだよってことなんじゃないかなあ、などと思ってみたりした。

Text by 鮎川夕子(編集部)

『無限大』
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CD
ビクターエンタテインメント
VICL-60605
¥2,900(税抜)
7月26日発売

1stアルバム『音楽』から1年、待望のニュー・アルバムはヒット・シングル「すべてへ」「果てのない道」も収録した充実の1枚。初回生産分のみ19オリジナル・ロゴ定規付きのスペシャル・パッケージでボーナス・トラックが入っている。これを逃すと後悔するぞ。

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