激しくドライブする深い情感を内包した歌声で、その登場からシーンの"事件"となった
ヤイコこと矢井田瞳!新作『B'coz I Love You』にもしっかりと焼きつけられた
鮮烈な個性の源流を探るべく、さっそく話を聞いてきました。
BRAND NEW ARTIST
矢井田 瞳
横ノリの心地いいグルーヴに乗ってどこまでも力強く伸びる歌声。鮮烈なタッチで描かれる、赤裸々で、どこか危うげな恋の心情。柔軟な個性と圧倒的なクオリティを湛えたインディでのデビュー作『HOWLING』の衝撃も覚めやらぬままにドロップされた待望のセカンド・マキシ『B'coz I Love You』で、その名を全国に、そして日本のロック史に刻み込むであろう驚異の新人、ヤイコこと矢井田瞳。この魅力は"オルタナティヴ世代のシンガー・ソングライター"と書けば伝わりやすいが、一聴した瞬間に背筋&三半規管にビリビリと電気が走るような出会いなんてのは、そうそうあるもんじゃありません!ヤイコならではのオリジナリティは、まさに世界レベルの突出っぷり。
「ありがとうございます。でも、ヤイコの場合は誰々に影響を受けて音楽を始めたというのは違うから、なかなか自分の音を説明するのは苦手ですね。今まであまり洋楽とかを聴いてこなかったから、曲も漠然と自分の中にあるイメージだけで作っているところがあって。だから、この音楽にヤイコならではのオリジナリティを感じてくれるとしたら、誰々の影響を受けてというよりも、心のまっさらな部分から出てきた音というところですね。よく、あの曲好きでしょ?とか聞かれるんですけど実際私はそれを知らなかったりするし(笑)」 心の奥から自然にあふれ出すメロディ。それがこのオリジナリティに直結しているとすれば、これほどに頼もしい才能もない。緻密な職人技工にも惹かれるが、何よりもロックのダイナミズムに必要なのは、こういった天然のセンス!「人って誰でも心の中にメロディを持っているものだと思うんですよ。たとえば、めっちゃ哀しいことに遭遇した時に、街中から明るいポップスが聴こえてくれば、自然とどうにもやるせない気持ちになったり…。人間は空気と水と食べ物があれば、物理的には生きていくことができるけど、豊かに生きるにはやっぱ音楽が必要やし、絶対に誰もが心の中にメロディを持っているんだと、そう信じているんですよ。ヤイコは昔から鼻歌が大好きだったし、ほんと、今はそれの延長上だと思うんです……歌を歌うことは昔から大好きでしたね。物心ついた時から家にはたくさんのレコードが並んでて、幼いながらも大声で"水色の雨" "戦争を知らない子供たち"を歌う子供だったんです。そんなスタンスのままにこれからも、こんな普通の21歳の女の子が感じた"音"や"言葉"を素直に表現していきたいと思っていますね」
その表現を的確にサポートするのが、プロデュース・チームのダイヤモンド◆ヘッド。楽曲に黄金期のロック・テイストを盛り込みつつも、完璧に今の音楽へと昇華させるその手腕にも注目したい。今作も、バングルスの「冬の散歩道」なんかを連想させるタイトル曲に、思わずニヤリとさせられる。 「ダイヤモンド◆ヘッドとの作業は、本当にいい感じなんですよ。そうとしか言いようがないほどに。みなさん音楽の引き出しがとてつもなく多い人ばかりで、それでいて自分のこだわりも持ってる。きちんと意見の出しあえる環境なんです。相手の音を引き立てるのもプロだし、目立つのもプロ。そんなみんなに囲まれて、惚れてるみんなに囲まれて、音楽しているヤイコはめっちゃ幸せなんです!」 。
Text by 江森丈晃
(初出『Groovin'』2000年7月25日号)
『B'coz I Love You』
Maxi Single
東芝EMI
TOCT-22093
¥1,200(税抜)
発売中
ハードにうねるロック・グルーヴが全編に刻まれた痛快なメジャー・デビュー作。フィメール・シンガー・ソングライター続々登場の現シーンにおいても、他に頭ふたつ分ぐらいは軽〜くリードの超新星!心の機微を鋭く描写の詞世界も聴き逃せない、最新00年代ロックの名盤がコレ。
【矢井田 瞳 Official Web Site】http://www.hitomi-yaida.com/