Kemuri

SPECIAL SELECTION

Kemuri

あれから2年の歳月が生んだ、出会い、別れ、変化し続ける状況の中での決断…。
そのすべてがここにある。
Kemuri、ニュー・アルバム『千嘉千涙【sénka-sénrui】』リリース!

(初出『Groovin'』2000年8月25日号)

Kemuri-A.jpg スカ、パンク、ハードコアの融合した音楽をベースにホーン・セクションを加えたダイナミックかつエネルギッシュなサウンドで、絶大な支持を受けているケムリ。昨今のスカパンク、スカコア・ブームで乱立するバンドの中でも、その存在は別格である。なぜならば、ケムリの音楽はジャンルやスタイルといった"形"から創られたものではなく、確固たる"信念"の元で成立した音楽だからだ。彼らが掲げる「PMA(Positive Mental Attitude=肯定的な精神姿勢)」という信念に共感した人々は多い。そして、そういった信念を音楽という手段で伝えてきたバンドを、私はまだ他に知らない。
 97年のデビュー・アルバム『リトル・プレイメイト』、98年のセカンド・アルバム『77デイズ』がワールドワイドで発売され、海外ツアーも積極的にこなしてきたケムリ。今年3月には、彼らの大切な表現場所のひとつであるライヴの模様を収録した『"旅【tabi】"』をリリース。しかし、順調に見える活動の中には喜ばしい出会いも、悲しい別れもあった。今年2月のメンバーの脱退という出来事のあと、「現メンバーで出来ることをすべてやろう」と話し合って創ったのが、この2年振りのオリジナル・アルバム『千嘉千涙』だ。
 これまでの作品にも彼らの「PMA」は十分表れていた。しかし、今作には実際に壁にぶつかりながら、それを乗り越えたという事実と、2年という歳月が加わり、その姿勢が理想ではなく本物だったという証拠がそこかしこに見られる。
 例えば、ホーンが1本減ったことをマイナスの要因とせず、2本ならではのソリッドな響きを利用したアレンジがなされている。すべての事実を否定する事なくいったん受け入れたうえで、自分たちの方法を見つけるのだ。これぞPMA!
 しかし、そんな彼らの精神にふれようと変に身構える必要は全くない。背中を押すようなスカのビートに、高鳴る鼓動のように打ち響くドラムの音に、気持ちを真っ白にして飛び込んでみればいい。このアルバムの1曲目「one life, no regret」を聴き終わるころには、眠っていた元気が目を覚ましてくれるだろう。全15曲がとてつもない瞬発力を持っていて、時間があっという間に過ぎていく事を実感してしまう46分間を約束する。さらに9月26日からは2001年まで続く全国ツアーも決定している。彼らのライヴで直接パワーを分けてもらう事も強くおすすめしておく。
 ヴォーカルのイトウフミオは「皆さんからもらっているであろう"力"は本当に大きく、その"力"を心に、今までの姿勢を崩すことなく、これからも常に顔を上げて前を向いて進んで行きたいと思って、この『千嘉千涙』を創りました。『千嘉千涙』は我々からの投げかけです。」と語った。このアルバムとともに、世の中にある幾千もの喜びと幾千もの悲しみを、手を広げて受けとめよう。そして2度と戻らない今を過ごそう。そう思える"力"を与えてくれたケムリに感謝。それが私の答えだ。

Text by 鮎川夕子(編集部)

『千嘉千涙【sénka-sénrui】』
Kemuri-J.jpg




CD
ロードランナー・ジャパン
RRCA-11008
¥2,427(税抜)
9月6日発売

前作から2年振りとなるケムリのニュー・アルバム。スカ、パンク、ハードコアをベースにホーンを加えたダイナミックなサウンドに定評がある彼ら。今作も全15曲、炸裂するケムリ・サウンドを聴け!


inserted by FC2 system