小柳ゆき

ARTIST PICK UP

小柳ゆき

『KOYANAGI the Covers PRODUCT 1』に続く
2ndオリジナル・アルバム『EXPANSION』が遂に完成!
小柳ゆきは混迷する時代の先導者となるのか?!

(初出『Groovin'』2000年8月25日号)

小柳ゆき-A.jpg 小柳ゆきの揺るぎない個性を再確認することになったカヴァー・アルバム『KOYANAGI the Covers PRODUCT 1』から3ヶ月。いよいよ彼女にとって2枚目のオリジナル・アルバムが発売される。前述のカヴァー・アルバムでは圧倒的な歌唱力と個性で、どんな名曲にも負けることのない彼女自身のパワーを見せつけてくれた。カヴァー曲に限らず、楽曲の世界に歩み寄ることだけを考えて、明らかに「歌わせられている」アーティストが多いなか、彼女はその楽曲の世界をすべて塗りかえるだけのパワーを持って堂々と「歌って」いた。その力が証明された今、オリジナル・アルバムへの期待が高まるのも当然のことだろう。
 更にジャンルとか世代を越えたところで、彼女の作品は評価されているように思う。いわゆる国民的という冠の付くアーティストは少なくなっている昨今だが、つい先日、どう見ても5〜6歳の女の子が2人、声を合わせて「あなたのキスを数えましょう」を歌っているのを目撃した。もちろん彼女たちに歌詞の意味なんて理解出来るはずもない。はやりの音楽ジャンルなんて知ったこっちゃない。単純に"好き"で、"いい曲だと思った"から口ずさんでしまったのだろう。カラオケで彼女の曲を熱唱する女子高生やOLだとか、「いい歌を歌うねぇ」と感心するオジサマだとか、多くの人々をそういった極めて単純な理由で巻き込んでしまうポピュラリティこそ、国民的アーティストの条件なのだと思う。
 今作はそういった"本物のポピュラリティ"全開のアルバムになった。全てがシングル曲になりうるようなインパクトをもっているし、日本人の心の琴線に触れるようなメロディも非常に多い。多くの人にアピール出来るキャッチーさがある。だが、サウンド的には前作よりも格段に凝った"本物指向"な作りになっていてマニアックに楽しめる部分もあるのは、ジョン・ロビンソン、ニール・スチューデンハウ、ロブ・ベイコンら、海外のミュージシャンをゲストに招いて制作された事が大きく影響しているのだろう。アルバムを通して聴けるグルーヴ感は、普段邦楽から遠ざかっているような人にもぜひ体験して欲しい。
 そして、そのグルーヴに乗るというよりも、引っ張るような小柳ゆきのヴォーカルは圧巻である。感情が頂点にまで高まった状態である"激情"を表現できる才能は本当に貴重だと思う。その才能を最大限に引き出すことに成功した今作には、リスナーが期待するところの「聴きたかった小柳ゆき」と、私達の不意をつくような「聴いたことのない小柳ゆき」が同居している。アーティストとサウンド・プロダクション、双方の信頼関係から生まれるアイデアが導いた幸運な結果と言えるだろう。
 彼女の歌にはとても18歳とは思えないぐらい大人びた印象がある。声質だとか、卓越した表現力も勿論だが、何よりも自分のスタイルを確立し、突き進んでいこうとする強さがそう感じさせるのだと思う。大人が大人じゃない今、小柳ゆきの歌の"強さ"は私たちの憧れの対象になっているのかもしれない。それはポピュラリティという域を超え、彼女をジャンヌ・ダルクのように圧倒的なパワーを持って"人々を引き寄せる存在"にしようとしているのだろうか。このアルバムでそれを確認してほしい。

Text by 鮎川夕子(編集部)

『EXPANSION』
小柳ゆき-J.jpg




CD
ワーナーミュージック
HDCA-10046
¥2,913(税抜)
発売中

小柳ゆきのセカンド・オリジナル・アルバム。ニュー・ヴァージョンの「愛情」「can't hold me back」「be alive」「prove my heart」を収録。東京とL.A.レコーディングによる12トラック+1リミックスはすべて新録音。

【小柳ゆき公式ウェブサイト-yuki-koyanagi.jp】http://www.yuki-koyanagi.jp/

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