グレゴリアン

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グレゴリアン

荘厳な響きが、確実に心を癒す。
現代人のための、大人の自覚のある人の為の、
ただしいヒーリング・ポップがひそやかに生まれた。

(初出『Groovin'』2000年8月25日号)

 もう聴いていただけましたか。もちろん、CDライブラリーに加えてもらいましたよね。そう念を押したくなるのが、この「グレゴリアン」なるグレゴリアン聖歌の手法をもってポップ・ミュージックにトライしたユニット(しかしてその実態は英国教会の聖歌隊)の作品集だ。すでに音楽誌や新聞等で取り上げもされ、徐々にその名も浸透しつつあるが、まだご存知ない方のために、老婆心ながら「発売後レヴュー」をする次第だ。
 まず一番に見て欲しいのが、そのカヴァー楽曲の妙だ。基本の軸足は80年代におきつつ60年代の名曲をもそこに加えたラインナップは、このユニットの仕掛け人であるフランク・ピーターソンの志向が反映されているのだろうけれど、その仕上がりは、さすがエニグマの創設メンバーで、サラ・ブライトマンのプロデュースや楽曲提供を手がけている才人、元曲のスピリットを損なう事無く、新たな息吹を感じさせるものとなっているのだ。たとえばエリック・クラプトンの「ティアーズ・イン・ヘヴン」は、より荘厳で哀しみに充ちたものとなり、REMの「ルージング・マイ・レリジョン」もコアなファンをも納得させる仕上がり。R&Bの名曲である「スタンド・バイ・ミー」は装いをあらため、ゴスペル色の強い内省的なものへと変貌しているなど、リード・トラックとしてFMでエア・プレイの頻繁な「サウンド・オブ・サイレンス」の他にも聴きどころは一杯だ。音楽評論家として一家言ある北中正和氏も、とある雑誌のアルバム評で、このアルバムを紹介し「大人のポップス」として評価をしていたり、実際十分に大人である私も「そのとおりです!」と意を強くしている次第。なんだか知らないが、そんな訳で(どんな訳だ!?)、このCD、いまどきの流行物とはチョット違って、ゆるゆると、しかし確実に音楽好きな人々を「虜」にしつつある。本物のヒーリング・ポップは、これにとどめを刺す。

Text by Brian.W

『マスターズ・オブ・チャント』
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CD
ネットワーク・レコード
NXCA-00010
¥2,800(税抜)
発売中

エリック・クラプトンからサイモン&ガーファンクルまで、名曲の数々が、荘厳な装いを持って生まれ変わる。世紀末から新世紀への時間の流れの中で、確実に現代人の心を癒してくれる音は教会聖歌隊のメンバー達のユニットならではの美しさにみちている。まさに、正統派ヒーリング・ポップの誕生の瞬間が、この1枚のCDからうかがえます。




収録曲
1.ブラザーズ・イン・アームス(ダイアー・ストレイツ)
2.スカボロー・フェア(サイモン&ガーファンクル)
3.ティアーズ・イン・ヘヴン(エリック・クラプトン)
4.スティル・アイム・サッド(ヤードバーズ)
5.男が女を愛する時(パーシー・スレッジ)
6.ナッシング・エルス・マターズ(メタリカ)
7.フェイド・トゥ・グレイ(ヴィサージ)
8.ルージング・マイ・レリジョン(REM)
9.ヴィエナ(ウルトラボックス)
10.サウンド・オブ・サイレンス(サイモン&ガーファンクル)
11.セバスチャン(スティーブ・ハーレイ)
12.ドント・ギヴ・アップ(ピーター・ガブリエル)
* 終わりなき旅(U2)
* セイヴ・ア・プレイヤー(デュラン・デュラン)
* 日本盤ボーナス・トラック
 ( )内は各楽曲のオリジナル・アーティストです。

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