ZARD

ZARDが遂に、約10カ月振りのニュー・シングルをリリース!
坂井泉水が "歌える歓び" をさらに噛み締めて作り上げた今作は、
優しい眼差しで相手を想う気持ちに満ち溢れたミディアム・ナンバー。

（初出『Groovin'』2000年9月25日号）

　ZARDが約10カ月振りにニュー・シングル「Get U 're Dream」をリリースした。昨年は、坂井泉水が1つの区切りの年と言った程のリリース・ラッシュ。" ZARD Year "と思えるほどの活躍振りで楽しませてくれたのだが、今年に入ってからはライヴを完全収録したアルバム『ZARD Crusing & Live』のリリースのみ。その反動もあって、リスナーからすれば "これ以上は待てない!! "という渇望感がマックスに達していた時期でもある。そんな時、遂に新曲のリリース情報が入ってきた。それも、今世紀最後のオリンピックである、シドニー・オリンピックのNHKのテーマ・ソングであるのだから、ZARDらしい話題性のある華々しさで帰ってきてくれたと言える。
　久々となった新曲「Get U 're Dream」は、ドラムとベースの重厚なグルーヴ感がありながらも、華やかなキーボードと幾重にも導入されたコーラスによって、軽快で心地良いミディアム・テンポのナンバーへと仕上がっている。特に"遠くにいても君のことを見守っているからね"といったサビ部分での広がりを見せるコーラスは、包み込んでくるような優しさが溢れ出ていて、聴いているとエネルギーが注ぎ込まれるような不思議な空気が放出されている。コーラスだけでなく、ヴォーカルの方もいつにも増してエネルギッシュで圧倒される。坂井泉水は「今回はまた、とても純粋な気持ちで、歌える歓びを噛みしめながら曲作りをしました」とコメントしていた。やはり、枠に捕らわれず、ストレートな今の気持ちで歌った事がもたらした結果なのだろう。
　もちろん、ZARDの楽曲の最大の魅力である"応援ソング"とも言える坂井の歌詞も健在。オリンピックで活躍する選手へのエールを感じさせる内容でもあるが、それと同時に、何かをやろうとしている人・辛いこと苦しい事に直面している人・進む道を見失いつつある人……、といった何か支えを必要としている全てのリスナーにもメッセージは向けられている。曲に関しては、「一生懸命詞を書いている時に、まるで選手になったようなプレッシャーがありました（笑）。オリンピックの終了と同時に曲が色褪せると嫌なので、タイアップ抜きに考えた上でもクオリティの高い楽曲になるように気をつけました」とかなり気を配った様子。そのせいか、この曲には"プレッシャー"を感じるような強い励ましの言葉はない。そっと温かい眼差しで"頑張ってみよう"と見つめている姿のみ。例え側にいなくても"相手を想う気持ち"こそが大切なのだと、私たちに改めて教えてくれているような歌詞となっている。
　" 歌える" 歓び…それは、彼女にとってどんな宝物でも太刀打ちできない、世界で一番大切なもの。それを更に得て作り上げられた今作は、また何か新しい物を生み出す原動力となっているに違いない。この作品は、これから広がる21世紀という未知なる世界に向けて、ZARDの活動が一層広がる事を予感させるメモリアルなものとなるだろう。じっくりと心に刻みつけて聴いて貰いたいと思う。