サニーデイ・サービス

ARTIST PICK UP

サニーデイ・サービス

7枚目となる『LOVE ALBUM』で見せた、
サニーデイ・サービスの素顔。
変化を遂げる今の彼らをより自然体で表現した、名盤の登場。

(初出『Groovin'』2000年9月25日号)

 「期待は失望の母である」という言葉がある。「過ぎたるは及ばざるが如し」という言い方もある。過剰な期待は、余計なイマジネーションと既成概念を我々に想起させ、その結果現実がそれに追いつかない、ということが我々の日常世界には多々ある。それは音楽の世界でも同じこと。期待しすぎるが故の失望を、君も味わったことがあるだろう。特に好きなアーティストの作品に関しては。
 僕は毎回、サニーデイ・サービスの新作アルバムを聴くときには、一種構えた聴き方をしてしまう癖がある。それは例えれば、正座して正対して聴くような感覚。そして同時に発生する、過剰なまでの期待。でも彼らは常に、この期待に応えてきた。『東京』に収録の「あじさい」に見られる抑制の利いた都会的感覚の美。『24時』の「さよなら!街の恋人たち」での、疾走感と熱さ。『MUGEN』の中で一際光る、「サイン・オン」の優しさ。どれも彼らの"今"を伝える、素晴らしい曲ばかりだった。
 そんな聴き方を続けてきたものだから、今回の新作『LOVE ALBUM』もそういう迎え方をしてしまった。しかしいざ聴いてみると何かが違う。これはもっと楽に聴いていいアルバムかもしれない。それが今作を聴いての第一印象だった。音的にも、打ち込みによるサウンドを残しつつ、そこに生音を大幅に加えることで、新たな印象を生み出している。また今までと最も異なる点…それは中心人物である曽我部恵一ひとりによるサウンド作りではなく、共同プロデューサーとして高野勲と杉浦英治を迎えている点だ。その結果、曽我部恵一が制作の大半を背負ってきた従来の作品に比べて、サウンド的にもゆとりが感じられる。また先行シングル曲「夜のメロディ」「魔法」はもちろんのこと、シングルのカップリング曲として既に知られる「恋は桃色」(細野晴臣作)も、彼らなりのスタンスとリスペクトの気持ちが読みとれる、優れたカヴァーだ。もちろん曽我部恵一の美しいメロディは、健在。
 7作目となる『LOVE ALBUM』には、より自然体で音楽に対峙する彼らの"今"の姿が詰め込まれている。そして静かな変化を遂げながら、音楽の素晴らしさを我々に問いかける。 

Text by 土橋一夫(編集部)

『LOVE ALBUM』
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CD
ミディ
MDCL-1393
¥3,000(税抜)
発売中

共同プロデューサーとして高野勲と杉浦英治を迎えて制作された、通算7枚目のアルバム。より自然体で音楽に向かう彼らの"今"を表現した、完成度の高い作品。先行シングル「夜のメロディ」「魔法」「恋は桃色」(細野晴臣作)も収録。初回盤は限定スペシャル・パッケージ。

【サニーデイ・サービス web】http://d.hatena.ne.jp/sunny_day_service/

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