LOVE PSYCHEDELICO

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LOVE PSYCHEDELICO

前作「Your Song」のブレイクで一気に注目を集めたLOVE PSYCHEDELICO。
独特のグルーヴ感溢れるサウンドは、またひとつ進歩を遂げた。
期待集まる3rd Maxi、ついにリリース!

(初出『Groovin'』2000年10月25日号)

LOVE PSYCHEDELICO-A.jpg 音楽を「心地よい」と感じる瞬間って、人さまざまだ。ある人は深夜のクラブに大音量で流れるテクノ・ミュージックに合わせてリズムを刻むことで、またある人はカー・ステレオから流れてくるオールディーズに耳を傾けながら風を受ける瞬間に「心地よい」と思うのかも知れない。ではその「心地よい」感じとは、どこに由来するものなのか?大脳生理学とか音響工学の専門家に言わせたら、恐らくその人の立場なりの答えが返ってくることだろう。でもこの際、そんな理屈はいらない。自分のその時の感覚と感情に素直に入り込める音楽こそが、我々に「心地よい」感覚をもたらすのだ。
 そこでこのLOVE PSYCHEDELICO。彼らにとって3作目となるマキシ・シングル『Last Smile』がリリースされる。前作『Your Song』ではまさに見事なサウンドと詞で我々の度肝を抜き大ヒットを記録した彼らだが、そこには当然のことながらヒットするだけの要因が隠されていた。最近のJ-POPSシーンでは、ことさらサウンドが重要視される傾向にある。それは明らかに、洋楽的志向に基づくところが大きい。特にデジタル・サウンドが主流を占めた80年代後半から90年代前半にかけての流れへの反動からか、ここ数年アコースティックな感覚がクローズアップされてきた。しかし洋楽の模倣に終わるようなとって付けた如きアレンジでは、これら要素は1つの楽曲の中に点として存在することは出来ても、それ以上の繋がり、ましては曲全体としてのうねりを生み出すことは出来ない。それは日本語で表現するJ-POPSと英語圏の洋楽とを分離して考えるという、目に見えない区別が現実的に存在することを示しているのだ。しかしLOVE PSYCHEDELICOは全くこれらとは異質な感覚を備えている。それは前作「Your Song」を聴けば明らか。アコースティックとデジタルの無理ない併用、そしてヴォーカルを担当するKUMIによる英語と日本語詞の分け隔てない歌唱法。そこにはバリアは存在しない。この分け隔てのなさこそが彼らの最大の特徴であり、「心地よい」感覚を生み出す素なのだ。
 さて今作に話を移そう。『Last Smile』でもその方向性はさらに推し進められ、期待通りの良質なサウンドに仕上がっている。特に1曲目のタイトル・トラック「Last Smile」は前作以上に日本語詞の割合が増えた分、詞の風景が直に心に響いてくる。ちょっと切なさと憂いを秘めたメロディ・ラインとの相性も絶妙だ。またKUMIの声質は、佐藤直樹によるサウンドの中にどのようにとけ込んだら、Voとしての色を主張できるかという術を知っている。これはヴォーカリストとして非常に大事なこと。サウンドとヴォーカル、そして詞の世界や音の響き…これらが台頭にスクラムを組んだとき、はじめて曲としてのグルーヴが生まれる。またカップリングの「Moonly」「Wasting」でもまた違った魅力を引き出している点も見逃せない。
 はっぴいえんどが日本語のロックを打ち出してから、早30年。その間多くの楽曲が生まれ、J-POPSが1つのシーンとして成長したその30年間の成果に敢えて答えを求めるなら、その1つはこのLOVE PSYCHEDELICOの感覚とサウンドと言えるだろう。そして新たなJ-POPSシーンを牽引するのは、間違いなくこのLOVE PSYCHEDELICOだと、僕は本作を聴きながら確信した。来年早々にはアルバムのリリースもひかえている彼らからは、ひとときも目を離せそうにない。

Text by 土橋一夫(編輯部)

『Last Smile』
LOVE PSYCHEDELICO-J.jpg




Maxi Single
ビクターエンタテインメント
VICL-35188
¥1,200(税抜)
11月1日発売

鈴大ヒット作『Your Song』に続く、待望の3rdマキシ。切なさを秘めたメロディにからみつくKUMIの独特なヴォーカルは、前作以上に日本語詞の割合が増えた分、詞の風景が直に心に響いてくる。アコースティックとデジタル、英語と日本語詞を両立し生み出されるグルーヴ感は、心地良すぎる!

【LOVE PSYCHEDELICO OFFICIAL SITE】http://www.lovepsychedelico.net/index.html

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