TOMATO CUBE

ARTIST PICK UP

TOMATO CUBE

TOMATO CUBEがセカンド・マキシ・シングル「桜」をリリース!
メロディ、歌詞、サウンドが渾然一体となって、
心にしみわたる名曲が完成した。

(初出『Groovin'』2000年10月25日号)

 スタンダードとしてミュージック・シーンに残りうる曲を創れるアーティストというのは、大きく2種類に分けられると僕は個人的に思う。1つは自らの音楽体験に基づいた"素晴らしく良い曲"を生来の才能により、本能的に追い求めることができ、且つ、それを自分の子として具現化できる技術を持っているアーティストと、日常の生活空間の中から、自分の感性によって紡ぎ取った塊(CUBE)を大事に温めて、それに天から"何か"が降りてくるまで待ち、作品にまとめることができる才能を持ったアーティストだ。TOMATO CUBEのセカンド・マキシ・シングル「桜」を聴いて、その思いはさらに強くなった。彼らはまさに、後者の典型にピッタリとあてはまるユニットといえるだろう。
 TOMATO CUBEは、ヴォーカルの西村ちさと、ギターとコーラスを担当する山元全、高橋竜大で構成される。この曲は、リーダーでギターとコーラスを担当する山元全が、当時北海道(なんと札幌から3時間もかかるという留萌)に住んでいた、ヴォーカルの西村ちさとに送って完成した、彼らの最初に制作された楽曲である。同時に、ストリート・ライヴで夢をつかもうとしていた時に、ワーナー・ミュージックとのデビュー契約のきっかけとなった曲なのだそうだ。
 オーガニックなアコースティック・サウンドにのせて綴られる、切なくて純朴な歌詞を、西村ちさとの屈託の無い、心の襞にまで入りこんで、不純な物を洗い流してくれるようなヴォーカルで切々と歌われると、生き急いでいる日常の中でふと足を止めて休むことを許してくれるような優しさが、聴いているそばから溢れだし、えもいわれぬ満ち足りた気持ちになった。そこには聴くものの心を盗み去って行くような、派手な仕掛けやビートは無いが、西村が言うところの「実家のテーブルにいつもあった、茶色い魚の煮付けみたいに」「いつもそばにあって、体の中で確実に栄養となるような」歌詞とメロディが素晴らしい存在感を放っている。
 冒頭でも述べたように、TOMATO CUBEはどんな些細な出来事でも、自分たちの言葉とメロディを使ってさまざまな形をした塊を創ることができる。しかもその塊たちを、いつまでも輝かせることができるアーティストだと思う。それは、これから彼らが日本のミュージック・シーンの中で、数々のスタンダード曲を残すことができるパワーを内包していることを意味しているし、彼らはそのような宿命みたいな物を背負っているような気がする。
 これからも、メンバーの高橋竜太の言葉にあるように、「人々の心の中にある純粋な感情(TOMATO)を、ギュッと濃縮(CUBE)して」僕たちに届けて欲しい。きっと心の栄養になること請け合いだ。 

Text by 五味渕雅之(朝霞店)

『桜』
TOMATO CUBE-J.jpg




Maxi Single
ワーナーミュージック・ジャパン
WPC7-10056
¥1,200(税抜)
11月8日発売

テレビ朝日系ドラマ「スタイル!」のテーマ・ソングとなるTOMATO CUBEのニュー・マキシ・シングル。西村ちさとの屈託の無いヴォーカルと、切ない歌詞が、優しく美しいメロディにのって、僕等の栄養となってくれる。名曲の誕生だ!


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