マリリン・マンソン

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マリリン・マンソン

マリリン・マンソンが原点回帰!?90年代を総括し、
新たな地平へ旅立つ彼が差し出したニュー・アルバムは、
いまだに病みつづけるアメリカの暗部をえぐりだす衝撃作!!

(初出『Groovin'』2000年10月25日号)

マリリン・マンソン-A.jpg ここ日本でも最近の少年犯罪については問題になっているが、その原因を語る際に必ず出てくるのがバイオレンスな描写のある音楽・映画・本などを槍玉に挙げ、批判をする論調である。必ずといって良いほどその当時加害者が好きだった曲、バンド、あるいは読みふけっていた小説や漫画を紹介してここのフレーズが暴力的だとかこのシーンが残虐だと指摘する。しかし、普通にテレビを見ていてもちょくちょくそんなシーンが出てくるような現在で、ある特定のメディアだけを暴力的だとか過激だと批判するのはどうか。
 事態がより深刻なアメリカはさらに厳しい事態になっている。有害なシーンをカットするチップを内蔵したTV・PCは分かるとしても、有害と思われるCD、本などの店頭からの排除、特定のアーティストに対するライヴ活動の禁止など取り締まりは年々厳しさを増し、その槍玉に挙げられる1番手がマリリン・マンソンである。
 いくつかの州でライヴを禁止され、凶悪事件があればまず影響を受けたとされる音楽として登場する彼だが、そんな逆風の中でも活き活きと活動を続けている。そもそもアメリカでは以前からこの手のロック・スター(アリス・クーパー、オジー・オズボーン、KISS等)はいつづけているし、マリリン・マンソンがことさら過激だといわれるのは、マスコミ・メディア全体が過激さやインパクトをエスカレートさせた結果、あの表現にたどり着いたのではないか。奇抜なファッションやその言動、うそか本当か分からないような生い立ちなど副産物的なものに注目が集まり過ぎの感があるが、アーティストとしてのマリリン・マンソンは確実に進化している。ついに完成したニュー・アルバムは『アンチクライスト・スーパースター』『メカニカル・アニマルズ』と続いた3部作の最終作にあたる。アルバム制作時のインタビューでも語っているとおり、10年間の活動を通して自分が主張してきたもの、表現してきたものを踏まえて、今やりたいこと、自分がアルバムを作る上でのモチベーションが10年前の自分の状態に似ているということである。彼の中では10年たっても相変わらず変わりなく腐りつづける人間・社会に対してもう一度原点に戻って吼える必要があったのだろう。そして自分の偽者が増えつづける中で、本当の怒り・憎しみを表現できるのは自分だけであるということをもう1度オーディエンスに分からせるためであり、この『ホーリー・ウッド〜イン・ザ・シャドウ・オブ・ザ・バリー・オブ・デス〜』はその決意と自信に満ち溢れたものすごいアルバムになった。
 収録された曲のクオリティも異常に高い。重量級のバックに異様なマリリンのヴォーカルが絡まるお得意のスタイル、インダストリアルな曲やグラム・ロックな曲や美メロなPOP曲などバラエティ溢れる楽曲を、今までにないテンションで料理した本作は最高傑作ともいえる内容。これから見られる強烈な(またアメリカでは放映中止か!!)ビデオ・クリップと併せて、真にオルタナティヴな音を楽しみたいロック・ファンはぜひ聴いて欲しい。また、和解したとされるもう1人のカリスマ、トレント・レズナーとのコラボレートが復活することも期待。

Text by 作山和教(西那須野店)

『ホーリー・ウッド〜イン・ザ・シャドウ・オブ・ザ・バリー・オブ・デス〜』
マリリン・マンソン-J.jpg




CD
ユニバーサル インターナショナル
UICS-1002
¥2,427(税抜)
11月8日発売

『アンチクライスト・スーパースター』『メカニカル・アニマル』とつづく3部作の完結盤。そうとうなテンションと決意の下に作られたその内容は完璧。年末に出される自作の本のサウンド・トラック的な意味合いも有り、ファンは両方揃えた方がいいかも。日本先行発売。

【ユニバーサル ミュージックによる公式サイト】http://www.universal-music.co.jp/u-pop/artist/marilyn_manson/

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