MISIA

ARTIST PICK UP

MISIA

MISIAの魅力は、J-クラブ・シーンの成熟とともに新たなステージへ。
豪華リミキサー陣を迎えて制作された、クールでゴージャスな作品集。
そこには、21世紀のクラブ・シーンの新たな予感が...。

(初出『Groovin'』2000年4月25日号)

MISIA-A.jpg ここ数年のJ-POPSシーンは、まさにクラブ・ミュージックと共に進化を遂げてきた。DJたちの自由な発想とフレキシブルな感覚は、多くの場合クラブのターンテーブルを通じて、ファンに新鮮な魔法を振りまき続けてきた。リミックスという概念が一般的に定着し、多くのDJが輩出され続ける中でDJとしての個性を発揮し続けていくことは、もしかしたらオリジナルの楽曲を制作することよりもある意味難しいのかも知れない。そんな中、常に欧米のシーンを研究しながら、そこと競争し刺激を受ける形で形成されてきたJ-POPSシーンも、最近では新たな局面に向かいつつある。特にR&Bやヒップ・ホップというジャンルにおいては、当然欧米の黒人音楽の強烈な影響があり、現地のアーティストと肩を並べるなんて考えも及ばなかった訳だが、ここ数年は日本のシーンも成熟し、その国境や国民性、音楽性といった壁をものともせず、軽々と飛び越えるアーティストが育ってきたことは、嬉しい限りだ。
 さて、MISIA。彼女の大活躍ぶりはみなさんご承知の通りだが、彼女もまたデビュー当初よりクラブ・シーンを強力に意識しつつ作品を送り続けてきたアーティスト。独特な彼女の歌唱力とクールなサウンドは、当然のことながらクラブ・シーンで高い評価を受け続けてきた。またクラブ・サウンドが一般化し広がりを見せる中で、彼女の支持範囲や活動範囲もさらに広がり、今ではクラブ以外の所でも圧倒的な評価を受けているという事実もある。もちろん本物志向で、R&Bやヒップ・ホップという既成のカテゴライズにとらわれないリスナーが増えたことも、大きな要因の1つだ。そして、こうしたリスナー達の期待がますます高まる中、届けられたのがこの『MISIA REMIX 2000 LITTLE TOKYO』だ。
 タイトルを見てお分かりの通り、本作は「つつみ込むように…」「陽のあたる場所」「忘れない日々」といったMISIAの今までのヒット曲を含む全11曲を、全てリミックス・ヴァージョンで収録したアルバム。しかもうち9曲は過去限定盤のアナログやカセットのみでリリースされたもので、もちろん初CD化というまさに待望の作品集だ。また担当したリミキサーも、マドンナやホイットニー・ヒューストンらを手がけるジュニア・ヴァスケスをはじめ、グロリア・エステファンのリミキサーとして知られるヘックス・ヘクターや、マスターズ・アット・ワーク、フランソワ・ケヴォキアン、さらにはサトシ・トミイエ、カズヒコ・ゴミ、マラウィ・ロックス、DJ WATARAIなど超豪華なメンバー。彼等が創り出す独特のグルーヴと互角に渡り合う、MISIAのヴォーカルも、聴きどころの1つだ。さらにCD-2はエンハンスドCD仕様となっており、エクストラ・トラックとして未公開のライヴ映像も収録されているというおまけ付き。聴き慣れたおなじみの曲たちも、このアルバムのリミックス・ヴァージョンで改めて聴くととても新鮮。その圧倒的な存在感とバック・トラックに負けない歌声自体のグルーヴ感を、改めて浮き彫りにしてくれる格好のアルバムだ。そしてそこから彼女が多くのファンに支持され続けている本当の理由が、垣間見られるはずだ。またリミキサー達の仕事も、実に見事。オリジナルとは違った良さを適切に見いだし、増幅させることで、作品に新たな息吹を吹き込んでいる。
 今やDJやリミックスというスタイルは、もはや音楽を作る上だけではなく、生活のスタイルの一部としても定着した感がある。しかしそういう状況になればなるほど、本物とイミテイションの境界線も曖昧になってくるもの。MISIAの『MISIA REMIX 2000 LITTLE TOKYO』を真剣に聴いていて、僕はこんなことを考えていた。本物だからこそ、できる強さ。One & Onlyだからこそ、表現できること。MISIAの歌声は、例えリミックスされても強力な個性を放つものばかりだ。彼女の強さと表現力の素晴らしさに、僕はまた打ちのめされてしまった。

Text by 土橋一夫(編集部)

『MISIA REMIX 2000 LITTLE TOKYO』
MISIA-J.jpg




CD
BMGファンハウス
BVCS-28001〜2
¥3,000(税抜)
発売中

待望の本作は、マドンナやホイットニー・ヒューストンらを手がけるジュニア・ヴァスケスなど、世界のトップを行くリミキサー11組を迎えて制作された豪華な2枚組リミックス・アルバム。ビートに乗せて聴くMISIAの歌声は、21世紀のクラブ・シーンを予感させる。

【MISIA OFFICIAL WEB SITE】http://www.misia.jp/index_main.html

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