sugar soul

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sugar soul

息を呑む静寂。地を震わす躍動。
あの瞬間が甦る、驚愕のライヴ・アルバム。
愛の庭となったあの日のライヴ会場にいるかのような感覚が、必ずこのCDで味わえます。

(初出『Groovin'』2001年1月25日号)

 sugar soulのライヴ・ベストが2枚組でリリースされると聞いて大きな期待をしつつも、正直なところ個人的なライヴ盤に対する苦手意識が少しだけ働いてしまった。それは、観客の拍手や歓声が楽曲の邪魔をしてしまうとか、音質がどうとかいった単純な問題ではない。ライヴはステージに上がる人間も含めて、基本的にその場にいた人達だけのものだと思う。それを映像があるのならまだしも、音だけで聴くというのはなんだかむなしい気がしてしまうのだ。スピーカーの前の自分はあくまで"第三者"なんだという疎外感のようなものさえ感じる。そもそも音楽に限らず、音だけでその場の特別な雰囲気を感じ取るのは難しいことでもあるし、そこがライヴ盤を聴く上での大きなハードルになっているんじゃないかと思う。もちろん、こうしたハードルを軽々と越えるとんでもない"名ライヴ盤"が音楽史上に存在するのも確かではあるが…。
 そんなことを考えながら聴き始めた今作だったが、はっきり言って如何に自分がくだらない心配をしていたかを思い知らされた。sugar soulを甘く見過ぎていた。このライヴ・ベスト、疎外感なんて微塵も感じさせない。それどころか、会場にいるオーディエンスの一員としてヒートアップしていく自分を否応なく想像させるのだ。音楽はもちろん、その場の空気感を楽しむことが基本にあるクラブから生まれたsugar soulだから、こうして音だけでも十分に熱いライヴの空気を伝えられるんだろうか?匂い、振動、光…耳に伝わってくるはずのないものが、確かにこのアルバムの中からは感じられる。
 さて、CD2枚組とボリューム感のある今作の内容はというと、1枚目にはsugar soul tour 2000-うず-から全国各地の選りすぐりのテイクを15曲、2枚目には昨年11月にsugar soul With V.I.P.BANDというセットで行われた学園祭の模様を、こちらもベスト・テイクで11曲収録している。選曲もベスト的な内容となっているため、ライヴに通いづめのコア・ファンにも、ナマsugar s1oul未体験のリスナーにも必須アイテムとなるに違いない。ZEEBRA、DJ HASEBEら、コラボレーション・アーティストをゲストに迎えたアドリブも聴きどころ。また、あいこのライヴならではのフェイクが楽曲の中に大きなメリハリを付け、思わずぞくっとさせられる瞬間もある。本能の赴くままといった感のある、まるで予想の出来ないあいこのヴォーカルに振り回される心地よさ、高まり続けるグルーヴ、〜この波にのみ込まれていたい〜そんな瞬間をバーチャルに体感出来る作品になっている。
 そして、私はこのアルバムでsugar soulという音楽だけでなく、あいこという人間にも惚れ直してしまった。それはパフォーマンスを目の当たりにしたわけでもないのに、彼女の生き方のようなものがこのライヴ盤を通して伝わってきたからに他ならない。そういえばライヴって生きるっていう意味もあるし、まさに"ライヴ・ベスト"といえる今作はsugar soulを聴く上での大きなヒントになるのかも。そして、そういう意味でも単なるライヴ・アルバムという枠を越えてしまった今作は、日本の音楽シーンに数少ない"名ライヴ盤"のひとつになるのだろう。

Text by 鮎川夕子(編集部)

『Balance』
SUGER SOUL.jpg




CD(2枚組)
ワーナーミュージック・ジャパン
WPC6-10117〜8
¥3,100(税抜)
発売中

全国ツアー"sugar soul tour 2000-うず-"からのテイクを15曲収録したDISK 1と、2000年11月に各地で行われた学園祭からのテイク11曲を収録したDISK 2という構成の2枚組ライヴ・アルバム。エクストラ・トラックとして「Garden」(00.7.6 Zepp TOKYO)の映像を収録。


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