L'Arc〜en〜Ciel

インターネット投票により、リスナーから選び抜かれた最強のシングル・ナンバーたち。
これぞまさにシングル・ベスト！
『Clicked Singles Best 13』いよいよ3月14日リリース！

（初出『Groovin'』2001年2月25日号）

　「手作業による再集計は…」あまりにもタイムリーな時事ニュースをパロディに作られたテレビ・スポットで既にご存知だとは思うが、3月14日にL'Arc〜en〜Ciel初のシングル・コレクションが発売されることになった。現在までに発表されたシングル21曲の中から収録される楽曲の選定については、日本を含めたアジア8ヶ国で行われたインターネットによる投票の結果が反映されている。つまりはリスナーが主体となって作り上げたベスト・セレクション。これぞ究極のシングル・ベスト！と言えるアルバムなのだ。
　今作でやはり特筆すべきは、収録の対象となるのが"シングル曲"であること。思うに、シングルとはそのアーティストが絶対的な自信を持って送り出す4番バッター的存在だろう。ヒットを期待されることはもちろん、その時点でのアーティストの顔とも言える作品だ。また、テレビ、ラジオ等で耳に触れる頻度を考えると、その重要性はおのずと見えてくる。日本の音楽シーンでは各アーティストの音楽を知る入り口として最もポピュラーな存在だろう。ご多分に漏れず、私も彼らの音楽に魅せられたきっかけは今作に収録されている1曲のシングルである。インターネットでも既に投票済みのその曲名はあえてふせるが、当時の「捕まれた」感覚は今でも鮮やかによみがえってくる。ほんの15秒間我が家のテレビから流れたメロディは、L'Arc〜en〜Cielというバンドに興味を持つには充分すぎるものだった。そんな不意の出会いとなった1曲が今作の中にあるという人も少なくないはずだ。
　さらに今作には驚くべき隠し球も用意されている。それが今回新たにレコーディングされ、唯一の未発表曲となる「Anemone」。彼らはインターネット投票に参加してくれた多くのリスナーに対して、この曲を収録することで感謝の意を示しているのかもしれない。さらにアルバムのラストに配置することで、最終的に今現在のL'Arc〜en〜Cielの姿がしっかりと浮かび上がってくるという効果もある。常にリアルを意識し、その中を走り抜けてきた彼ららしい演出ではないだろうか。
　今作はL'Arc〜en〜Cielが作り上げた伝説をうずたかく積み上げたかのようなアルバムではある。だが、彼らはそれを振り返って、ただ漠然と眺めるためだけの作品にはしたくないのでは？と私は思う。もちろんファンにとっても彼らにとってもある種の感慨はあるだろうが、今作からは世のベスト・アルバムにありがちな懐古主義的な趣はまったく感じられない。逆に、こうして集まることで1曲1曲が新たな破壊力を持ち、そこかしこに埋まった地雷を踏んでしまうかのように、何十回と聴いたはずの楽曲に改めて"やられて"しまうのだ。そして、この偉大なる音楽の破壊力がある限り、L'Arc〜en〜Cielは私達を魅了し続けるんだろう。

Text by 鮎川夕子（編集部）