ARTIST PICK UP
COIL
あいかわらずの日常にひっそりと届けられたやさしいメロディー。
COIL待望の3rdアルバムは傑作2枚組、
変わらない季節のサウンド・トラック。
(初出『Groovin'』2001年4月25日号)
季節の変わり目というものを、なんだかワクワクして楽し気なものと感じるか、それともなんだか寂しい気持ちになるのか。ぼくらはいつもその2つの感情が組み合わさった、よく分からない気持ちでもってその時を迎えているんだと思う。しかし、どうも最近は個人的な感情は抜きにしても、世間的にも後者のバランスが大きくなってきてるような感じがするのは気のせいだろうか?音楽シーンとしては新世紀への変わり目の前後で、いろいろなバンドやアーティストの解散や活動休止が相次いだから、そんな気持ちにもなるのだろうけど。
COILの音楽から僕がそれと似たような"寂しさ"を感じるのは、彼等がそんな「一つの季節が終わったところ」「物語を無くした世界」から音楽を鳴らしているように感じるからだろうか。2年くらい前、友達から「日本の宅録でいいのあるよ。」と勧められて聴いたのが彼等の1stアルバム『ROPELAND MUSIC』だった。その時僕はそれぞれの曲のメロディーの良さと、宅録としての音選びのセンスと完成度にとても驚いたのだけれど、同時にアルバムとしての統一感や物語性、なにかを突き破るような強度が足りないかなと感じた。しかし今思うとそれは、当時の自分が音楽に一時の大きな興奮やなにか大きな物語をみせてくれるのを求めていた、期待していたというだけの事でしかなく、COILは、それは幻想でしかないし、それがないのが音楽として悪いわけじゃないという事を知っている"大人"だったというだけなのかもしれない。
実際彼らの2ndアルバムでは、アルバムの統一感や音の強度は格段にアップしたし、続く今作では2枚組全20曲というボリュームにもかかわらず、聴き手を飽きさせない曲展開や、彼等独特の極上の甘いポップ感覚は健在だし、宅録にしろスタジオ録音にしろ、とにかく音のセンスがいい。名盤とよぶにふさわしい作品に仕上がっている。あいかわらずの振り切れそうで振り切れない歌詞には時々グッときて立ち止まりつつ、それでも僕はまた新しい季節を迎えたいと願う。
Text by 戸塚隆史(鹿沼店)
『◁AUTO REVERSE▷』
CD(2枚組)
インペリアルレコード
TECI-1017〜8
¥3,000(税抜)
5月9日発売
世間的な評価を一気に高めた前作『ORANGE&BLUE』から1年、ついに届けられたCOILの新作は2枚組(しかも価格破壊!)。宅録あり、スタジオ録音あり、宅録/スタジオ併用ありとそれぞれの手法を用いつつも、彼等独自の甘い極上ポップ・センスは健在!名曲めじろ押しのオススメ盤です。
【COIL Official Web Site】http://www.office-augusta.com/coil/