Chara

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Chara

Charaの拡げた「果てしなく大きな地図」の一番優しく、暖かい場所。
そんな素晴らしい世界で、どこまでも自由に紡ぎ出された音と言葉達。
最新作『マドリガル』に込められた「想い」が、いま届いた。

(初出『Groovin'』2001年7月25日号)

chara-A.jpg チャラのニュ−・アルバムがついに出る!昨年シングル「月と甘い涙」がリリースされた時は、「おっ、そろそろアルバム出るのか?」と思ったらベスト盤だったりと、(「月と甘い涙」が個人的に最高だっただけに)肩透かしをくわされてしまったのだけれども、これだけ充実したアルバムを作ってくれると待たされた甲斐もあったというものだ。
 今作『マドリガル』は、チャラの今までのアルバムの中でも、最も「やさしさ」と「暖かさ」を感じさせる作品だと思う。「今回のアルバムには"実"がよく登場する」とチャラは言うが、アルバム全体の曲の感触はまさしく、暖かく柔らかな日ざしを受け続けてりっぱな実をつけた木々、そんな風景を感じさせてくれる。
 1曲目、元スマッシング・パンプキンズのギタリスト、James Ihaが作曲・編曲そして日本語でヴォーカルとして参加した「ボクにうつして」から、チャラのいつにも増した優しいヴォーカリゼ−ションに気持ちが暖かくなる。James Ihaとの掛け合い「みちた ひかりが わかれた」という最後のラインがちょっと切ない。2曲目、アルバム先行シングルでもある「スカート」はチャラ流サイケデリック・ソング。この曲に限らず今回のアルバムにはサイケデリックなサウンドが随所に使われており、夢の世界、というか童話のような物語をイメージさせる。シングル曲「レモンキャンディ」のカップリングでもあった「悲しみと美」をはさみ、チャラいわく「なぜか、アイススケートをしている女の子が、ずーっとバック・スケーティングしている姿がでてきた」という4曲目「キャラメルミルク」は、tahiti 80のプロデュ−サ−Andy Chase作曲による、ちょっとした孤独と安らぎが同居した名曲。同じ場所をあてもなくグルグルまわりながら、物思いにふけっているイメージ。5曲目「ため息の実」はチャラ作曲によるポップな佳曲。サビの「ベイビー ベイビー」の歌声がかわいい。そして6曲目「レモンキャンディ」はやはり名曲。岡村靖幸作曲によるメロディーもさることながら、チャラのヴォーカルとの組み合わせの素晴らしさに聴き入ってしまう。まさに天使の歌声だ。
 個人的にはアルバム全体の中でも、この前半の流れが特に好きなのだけれど、思わずラジカセの音量を上げて踊り出したくなってしまう、アルバムの中でも異色の楽曲「TADD」も最高だし、ウッド・ベースが印象的な、ポップな「イエローバルーン」もおもしろい。また、アルバム全編のイメージはまるで夢の世界のように気持のいいものなのだけれど、最終曲「あたしのかわいい手」だけは詞・曲ともに、現実世界での決意のようなものを感じさせる。この曲をラストにもってきたのは意識的なものだろうし、安らぎの地にずっといるわけじゃなく、「この先にはまだまだたくさんの悲しみと、それを埋めるだけの喜びが待っているはずだから」というメッセージのように僕は聴いた。「〜人生は冒険から〜」今を幸せに想う安らぎと、未知なる地への希望に満ちた傑作だと思う。

Text by 戸塚隆史(鹿沼店)

『マドリガル』
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CD
Epic Records
ESCB-2247
¥2,913(税抜)
発売中

前作から2年4ヶ月ぶりとなる今作は、Tahiti 80のプロデューサーAndy Chase、atamiの渡辺善太郎、FOE、EL-MALOの會田茂一、GREAT3の白根賢一、James Ihaら、豪華な面々と共に築かれた「優しさ」と「切なさ」溢れる傑作アルバムです。

【CHARA Official Site】http://charaweb.net/

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