有里知花

「この世に生まれた私にできること、それは歌うこと」
まったく新しい歌との出会い。花のように華やかな有里知花、
デビュー・アルバム『hana』リリース。

（初出『Groovin'』2001年7月25日号）

　新しい価値観が生まれる瞬間、それはとてもナチュラルで、美しく澄みわたっている。必然性というのはそういうものだろう。まったく新しい歌との出会い、有里知花のデビュー・アルバムが7月4日にリリースされた。ハワイの海と太陽が後押しているのだから、何も怖いものなどない。
　アルバム収録曲の中から先行オンエアされていた「I cry」は、ハワイの人気FMステーションで異例のパワー・プレイが決定するなど、アルバム発売前から盛り上がりをみせている。全編英語のこの曲、実はハワイ在住のソングライターKenneth Makuakane氏の作品だ。何々系といったジャンルにとらわれない、彼のソング・ライティングとアレンジ・ワークは、日本では感じられない風の音がする。新鮮だ。海、風、光といった印象を抱かせる有里知花のヴォーカルと、包み込むような、穏やかで温かみのあるアレンジは違和感なく溶け合っていて、心地よく、流れるように耳に入ってくる。開放的な感じが伝わってくるアルバムに仕上がっている。
　なにかとヒーリング系がとりざたされる今日、様々なヴォーカリストの声を聴き比べてみたりして…。でも、本当に心和む瞬間というのは、音像のバックに映像が浮かび上がる瞬間ではないだろうか。それが景色だったり、色だったりするわけで、きっと各々感じるものも違うだろう。壮大な自然を前に、私達は思い出すのだ。自分の心の中にある海のように深い記憶や、大きな空のごとく果てしなく続いている可能性を。
　有里知花とハワイは切り離せない深い絆で結ばれている。「海のように 空を映してよ、空を」（「友情」より）きっとハワイの海は大きくて、静かで、いつでも温かいのだろう。

Text by 森田みき（玉川高島屋店）