エレベーター・スィート

ARTIST PICK UP

エレベーター・スィート

60'sミュージックmeets DJ!
この夏最も危険なグループ、
"エベーター・スィート"が仕掛けたニュー・サウンドとは? 

(初出『Groovin'』2001年7月25日号)

エレベーター-A.jpg "その音楽はカーナビーをクラッシュしながら暴走するジャガーの如く。その音楽は豪華客船の上で出逢った場違いな2人のアヴァンチュールの如く。その音楽は白い手袋のコール・ガールが消えたエレベーターの如く…。"
 これは彼らの音楽と共に届いたプロフィールにあった文章。なんて素晴らしくわけのわからない紹介コメントなんだろう!でも、おかげで僕のようなひねくれものポップ・マニアの目に留まることになったわけだけれどね。
 まあ何はともあれ音ということで、早速PLAY…おっ!…ははーん…へえー…なるほどー…。この音は、えー、言うなれば何かカーナビーをクラッシュしながら暴走するーってオイッ!! 紹介コメントと同じだよ!と、ひとりノリツッコミしてしまうほど当たってるんだなこれが!付け加えるなら"都会の風景を早送りしたり、スローモーションにして見ているかの如く"かな?
 それはひとまず置いといて、まずは彼らのバイオグラフィーを紹介しておきましょう。メンバーはイギリスのサリスベリーでフロアを賑わせていたDJのロボと、彼の友人のDJ/グラフィック・デザイナーのアンディ、そしてマルチ・プレイヤーのスティーヴの3人。スティーヴのアパートにはレコーディングの機材が全て揃っていて、自分でデモ・テープを作ったり、人にレンタルしてお金を取っていた。(かなりの音楽おたくで、しかもかなり合理的?)そこに共通の友人を通してアンディが連絡を取ったということである。それまでポップスと現代クラシックを好み、サンプリングには理解を示さなかった音楽純粋主義者のスティーヴだったが、2人のDJと意気投合し、1stシングル「Man In A Towel」を完成させた。これが多くのレコード会社の話題になり、遂にデビュー・アルバム『barefoot & shitfaced』のお披露目となったわけである。
 彼らは、1stアルバムにして"ポップ+イージー・リスニング+ダンス"という独自の方向性をはっきりと打ち出したのだ。全体の雰囲気がタヒチ80に似ているということで比較されがちだが、明らかに手法もアプローチも違う。双方とも60'sをリスペクトしているという点では同じだが、タヒチ80は60's回帰的であるのに対して、エレスイは逆に最先端の音楽を作ろうとしているのだ。そういう点で2人のDJの果たした役割は非常に大きかったと言える。UKのクラブでは、無理やり踊らせる能天気なハウスやトランスをかけている所が多いらしいが(いいのもあるけどね!)、エレスイの音楽はナチュラルに体が揺れてくるとても気持ちいいダンス・ミュージックなのだ。まあこのアルバムをイージー・リスニングとして聴くか、ダンス・ミュージックとして聴くかはみなさまにお任せしますが。
 ちなみに、この粋で60'sチックなCDジャケットはアンディによるものなのだ。最初はなんと、ジャケットまでサンプリングしようとしていたらしい!彼らが楽器のスイッチをONにした瞬間から、CDジャケット制作、クラブや僕らの家で音が出るまでの全てが、彼らの芸術作品と言えるのだろう。多くのバンドがデビューしてプロ仕様の新しい技術に溺れて自分達の個性を見失っていく中、次回作で、また何かエレスイにしかできない新しい試みをしてくれることをとても期待している。このCDに出会った僕は、まるで徳川埋蔵金を発見した糸井重里と同じくらいの喜びを感じているのであります。わかる?(笑)

Text by 山本隆史(Groovin' 5J店)

『barefoot & shitfaced』 
エレベータースイート-J.jpg




CD
Sony Records Int'l
SRCS-2504
¥2,400(税抜)
発売中

UKのプレスからインテリ、クラブ・ジャンキーまで、ロンドン中の音楽好きを虜にしたエレスイの1stが遂にリリース!カフェ、車の中、オフィス街、クラブetc…どんなシーンにもマッチする、この夏大注目のグルーヴィー・ラウンジ・ポップだ!

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