siren

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siren

まるで彼らをすべて映し出したような新作「原色の灯」の中に、
自分の姿を重ねてしまう。
そしてその先に見えるものは未来?過去?それとも…。

(初出『Groovin'』2001年8月25日号)

siren-A.jpg 「都会といえば?」ときかれたら、たぶん大多数の人が「東京」と答えるんじゃないだろうか。誰もが1度は憧れを抱く街、そしてこの国の全てにおいて核となる場所、東京。私が生まれた町からはあまりに遠くて、まさか自分が今、こうして働き、暮らす場所になるとは、ちょっと前の自分からは想像もつかなかった。幾度か訪れたことはあっても、生活する場所ではないと、地方の人間からは思えることもある。全ての中心であるこの場所に「挑む」こと、それは大きな渦の中に命がけで飛び込むくらいの勇気が必要なのだ。大袈裟に聞こえるかもしれないが、それだけの勇気を要してまで目指すだけの魅力が東京にはある。全ての中心である場所で夢を現実にできた時に味わえる達成感が人間として大きく成長させてくれるはずだ、そう信じて多くの人間がここへやってくる。
 彼らもそんな夢を抱いて、住み慣れた場所からやってきたのだろう。sirenの2ndシングルには、彼ら自身の「今」が痛いくらいに表れている。見上げた空の色があまりに鮮烈で、目をそらしてしまう瞬間がある。通り過ぎる模型のような景色に打ちのめされそうになりながら、それでも前に進むしかない現実。夢を形にすることの難しさ。高い高いビルで遮られ、星も見えない夜に思い出す、故郷や懐かしい人たちの顔。涙でにじんだ空をしばし見つめて、それでも歩き続ける。今日も、きっと明日も。ずっと。
 この東京には、たくさんの夢を持ってそれに向かっている人たちがいる。まだ夢や目標を見つけられていない人もいるだろう。気が遠くなるほどの雑踏をかきわけ、もっと強い自分になるために、もっと自信をつけるためにどうしたらいいのだろう。どうすることもできない「今」を抱えて途方に暮れているこの時間も、きっと無駄ではないはずだから、いろんな事に負けそうになりながらも、1歩1歩大事に進んでいきたい。この街を味方につけるも敵に回すも、すべて自分次第だとsirenの曲は語っている。誰もが鮮やかな光を手にするために戦っているということを、彼らの曲に教えられた。

Text by 二宮万里(編集部)

『原色の灯』
siren-J.jpg




Maxi Single
BMGファンハウス
BVCS-29051
¥1,200(税抜)
8月29日発売

sirenの最新作はドラマ「ウソコイ」(関西テレビ・フジテレビ系 火曜22時)の挿入歌。都会の中で迷いながらも自分の目指すものに向かって真っ直ぐに進もうとする、若さとひたむきさを感じる。「swamp road」「羽音(ハネオト)」も全くタイプの違う曲ながら、それぞれに強いメッセージ性が溢れている。


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