氷室京介

ARTIST PICK UP

氷室京介

ヴォーカリスト氷室京介の絶対的魅力が存分に堪能できる、
初のバラード・コレクション・アルバムの登場です。
東芝EMI時代の音源3曲も含んだ豪華盤、『Ballad La Pluie』リリース!

(初出『Groovin'』2001年9月25日号)

 氷室京介の美学を言葉にするのは難しいことだと思います。でも、もしかしたら彼のステージでのマイクを胸にあてるアクションが、全てを物語っているのかも知れません…。1988年にソロとなってから13年。アーティストとして揺るぎないポジションを確立したヒムロックですが、ソロ10年目のアルバム『COLLECTIVE SOULS』や、『masterpiece #12』『SINGLES』などのベスト・アルバムの発売はありましたがバラード・コレクションという内容は今回の作品が初めての事です。
 氷室京介というと8 BEATのロック・シンガーというイメージが強いかもしれませんが、彼の絶対的魅力を感じられるのは、なんといってもバラードです。彼のバラードの世界には、相反する要素が混在しています。攻撃的な要素、静かなる要素…それらの陰と陽の絶妙なるバランスが、彼のバラード作品の最大の魅力だと思います。
 また、ヒムロックが伝えるテーマやメッセージは、決してわかり易いものではないかもしれません。ですが、氷室京介という人間から発信される音楽は、我々リスナーの心に必ず響いてくるのです。なぜ彼がこの意味を伝えたいのか、痛みを噛み締めているのか、それをロックとしてリアルに表現し続ける…そういう意味で、彼は本当のアーティストだと言えるのではないでしょうか。さらに彼の発言や活動はリスナーに大きな影響を及ぼすことにもなります。それはとても喜ぶべきことでもありますが、それと同時に、責任や義務をも彼自身が背負うことになります。しかし彼の作品を聴けば、その答えが見えてくるのではないでしょうか。常に真剣に放つ音には彼の生き様が表れ、リスナーを感動させます。さらに、彼自身の音楽家としての喜びと悲しみまでもが、その楽曲から感じ取れるのではないでしょうか。
 さて今作ですが、全13曲、どれも切なく痛いバラードが集まっています。"LOVE & PAIN"〜愛するゆえに傷つき痛みを覚える。それでもそれ無しには生きられない〜彼のバラードの世界に浸ってみれば、あなたも新しい答えが見えるかもしれません。もちろんリスナーがいろんな印象を持つのも当然のことですし、感じ方は自由です。だけど一番身近で一番難解なLOVEがここに込められています。
 さらに今作には、東芝EMI時代の音源の「STORMY NIGHT」「RAINY BLUE」「Lover's Day」が収録されているのも嬉しいかぎりです。以前とは聴こえかたが違っていたり、今まで理解できなかったことが少しわかったり、聴くたびに発見のあるアルバムになっていると思いますが、これはリリースの新旧を感じさせない楽曲、それぞれの楽曲の持つカラーとクオリティがあってこそ成立すること。色あせることのない楽曲の輝きを改めて思い知らされます。
 シンガーであり、コンポーザーであり、プロデューサーでもあるヒムロックの、ビートのきいた楽曲の中では見つけられない魅力。強烈なビートをはずした時に浮かび上がるメロディの強さ、それを一番良い形で表現できるヴォーカル・スタイル、楽曲アレンジの多彩さ…素晴らしい点は本当に多いのですが、その中でもあらためて彼の声の良さ、ヴォーカルの上手さに魅了されます。これからの季節に、HAPPYな人もそうでない人も氷室京介の世界にはまってみてはいかがでしょうか。

Text by 武田邦裕(相模原千代田店)

『Ballad La Pluie』
氷室京介-J.jpg




CD
ポリドール
UPCH-1103
¥2,913(税抜)
9月27日発売

ドラマ「氷の世界」の主題歌「ダイヤモンドダスト」、東芝EMI時代のバラード「Lover's Day」、アルバム『beat haze odyssey』初回盤のボーナスCDのみに収録されていた「魂を抱いてくれ」のナイロン・ギター・ヴァージョン等を含んだ全13曲を収録。

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