特撮

ARTIST PICK UP

特撮

『アジテーター』〜そのセンセーショナルなタイトルを持った作品は、
我々を煽るエネルギーと成り得るか!?
特撮待望の3rdアルバム、ついに完成。

(初出『Groovin'』2001年9月25日号)

 先日、この原稿にとりかかる前に、大槻ケンヂの音楽ないし著書等を好む友人に電話をかけた。「特撮の新しいアルバムが出るから、それに合わせて原稿を書くんだけど…」「じゃあもう新譜聴いたの?歌詞はどうだった?」
 「カシハドウダッタ」…なるほど、そうか。やはり"歌詞"なんだな、とその時思った。曲調がどうかというより、歌詞が気になると、まず言った友人。その後私は、歌詞カードを片手にCDをもう1度聴きなおすこととなる(私はCDを聴く時、基本的に歌詞カードを見ないのだ)。そして、なんともいえない特撮の世界の中に入って行くには、その楽曲を大音量で聴くことができる耳と、大槻ケンヂの口から発せられる言葉の羅列を、しかと見届ける目が必要であるということに改めて気付かされるのだった。
 「改めて」という言葉を使ったのには理由がある。個人的な話ではあるが、私は先行シングル「ヨギナクサレ」についての原稿を以前に書いている。その時が、私と特撮の音との初めての出逢いだったわけだが、やはり詞の独特な世界に驚かされた。その際、原稿の締めの一言で、「今後彼らはどのようなアジテーションを繰り広げるのだろうか」といった表現を用いた。「アジテーション」−"煽動"。そして、今作のタイトルが『アジテーター』。なんという偶然だろうか。いや、偶然ではなかったのかもしれない。私はその初めての出逢いで、特撮の音の中に、どこか思想じみた、煽られるものをすぐに感じ取っていたのだ。
 彼らの音楽は、攻撃的なサウンドでありながらも、時にメランコリックな要素を感じさせる。今作は特にそれが顕著に表れており、先行シングルで見せた激しさをまるで中和させるかのようだ。そしてコミカルでありながらも宗教的な臭いと、ファンタジックでありながらも黒さを持った歌詞により、特撮の世界は成立する。この感覚、他のグループの音楽では感じることはできないはずだ。1度だけでも、足を踏み入れてみてはいかがだろうか。

Text by 渡辺麻美(玉川高島屋店)

『Agitator』
特撮-J.jpg




CD
徳間ジャパン
TKCA-72223
¥2,913(税抜)
9月27日発売 

あの大槻ケンヂを中心とするバンド、特撮の3rdアルバム。シングル「ヨギナクサレ」を含む今作は、彼らにしか表現できない独自のサウンドで構成されている。初回盤にはボーナス・トラック、「デス市長」を収録。このアルバムで10月からのツアーの予習をしておこう。初回盤のみボーナス・トラック収録予定。

【大槻ケンヂ公式ウェブ】http://www.okenkikaku.jp/okenkikaku/tokusatsu/

inserted by FC2 system