中川晃教

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中川晃教

バラディアーとしての素質も存分に詰まった
中川晃教のファースト・アルバムがついに完成!
彼のソング・ライティングの魅力とずば抜けたヴォーカル力が見事に絡み合った傑作の誕生だ。

(初出『Groovin'』2001年11月25日号)

中村晃教-A.jpg コンテンポラリーなR&Bシンガー達の間では、目指すヴォーカル・スタイルを表す言葉の中に、"シング・ライク・トーキング"というキーワードがある。これは、自らが伝えたいと願う歌詞をメロディに乗せて歌うとき、自分が目の前の人を説得するように、話しかけるニュアンスで歌い上げると言うことらしい。この事を実践するにはとてつもないスキルが必要だし、またその歌詞やメロディに対しての深い理解が伴わないと、ほとんど交わることの無いだろうシンガーとリスナーの人生経験の溝を埋め、説得するということは容易ではない。この"シング・ライク・トーキング"を、まだ弱冠18歳ながら、ファースト・アルバムにもかかわらず、いともたやすく表現できているのが、この中川晃教である。
 バラディアーとしての素質は、すでにスマッシュ・ヒットとなったデビュ—・マキシ・シングルの『I WILL GET YOUR KISS』や、それに続く、ドラマ「最後の家族」のエンディング・テーマにもなったセカンド・マキシ・シングル『I say good-bye』で充分に理解はしていたが、彼のデビュー・アルバムを聴いた時、すでに匠の域にまで達したヴォーカル力には驚かされっぱなし状態に陥った。"シング・ライク・トーキング"を実践するには、どちらかと言えばルーサー・ヴァンドロスや、J-R&Bシーンでいえば平井 堅に代表される様に、ウィスパー系の、ヴォイス・コントロールが得意なシンガーの方が俄然優位だが、彼はストロング・タイプのヴォーカリストでありながら、ブレイクにおける間のとり方や、センテンスの終わりの部分に出てくるこぶしの回し方などはもう絶妙で、特に今作におけるヴォーカルでは、そのブレスの音までを武器にして説得しようとしているのに驚かされる。
 また彼はこのファースト・アルバムで、ソング・ライティングばかりでなく、アレンジも手がけ、そのトラックがシンプルでオーガニックなサウンド・メイキングでありながら、妙に耳にまとわりつく不思議な感じを醸し出している。その事はきっと彼の音楽に対する感受性のフィルターが、吸収するものによって自由に変化するアメーバーのような状態で待機していて、いざそれを外部に向かって表現するときには、誰の影響も感じさせない、彼独自の音楽となって僕らのもとに舞い降りてくるのだろう。
 シンプルなバック・トラックのもとに織り成される中川晃教のヴォーカルは、彼の伝えたい事全てをリスナーに伝える事が出来るほどの確かな説得力を備え、心を乱されがちな私たちに安心感さえ与えてくれる。これから寒くなる季節に暖かい部屋の中で、中川晃教のアルバムを聴きながら、彼の歌声で説得されつづけたい。

Text by 五味渕雅之(朝霞店)

『中川晃教』
中村晃教-J.jpg




CD
徳間ジャパン
TKCA-72270
¥2,913(税抜)
12月5日発売

シンプルなバック・トラックのもとに織り成される中川晃教のヴォーカルは、彼の伝えたい事全てをリスナーに伝える事の出来るほどの確かな説得力を備え、その結果見事なアルバムに仕上がった。ファースト・アルバムにしてまさに快挙ともいえる作品になっている。  

【中川晃教 AKINORI NAKAGWA OFFICIAL WEBSITE】http://www.akinori.info/

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