LINDBERG

ARTIST PICK UP

LINDBERG

2002年の幕開けと同時に、彼らはまた新たなフライトに出る…。
リンドバーグ14枚目のアルバムは、
強さと優しさに満たされた1枚だ。

(初出『Groovin'』2001年12月25日号)

リンドバーグ-A.jpg その昔、小学5年生の私にとって、渡瀬マキは「皮ジャンを着たお姫様」だった。当時は80年代後半のいわゆるバンド・ブームの最中で、小さく、色の白い、まだ柔らかな少女だった彼女は、周りの男性陣のパワーに負けまいと、いつも体から何かを振り絞るように、「歌う」というよりも、メッセージを力いっぱいリスナーに向けて投げかけていた。ひたすら声をマイクにぶつけようとする彼女の姿勢は、今でも瞼の奥に焼きついている。そんなひたむきで、どこか少年性を持ち合わせたような雰囲気に、私は憧れを抱き、その強さが欲しいと願った。そう、「強さ」である。リンドバーグの楽曲には、不思議な強さがある。それはただひたすらに屈強であるといった類のそれではない。いわゆる、応援ソングを奏でるバンドの代名詞的存在であった活動初期〜中期にかけての彼らは、そうであるからこそ逆に、人間の弱い部分を肯定し、涙を流すという行為に反旗を翻すことなく、彼らの歌を耳にする全ての人々の心に訴えかけるものがあった。
 そして、ついに完成した14枚目のオリジナル・アルバムだが、ある種の風格が漂いつつも、バンドの最大の持ち味である楽曲のキャッチーさ、つまりポップでメロディアスな部分がいかんなく発揮されている。さらに、今作に限らず、彼らの近年の音には、柔らかさが増したように思われるが、それは言うまでもなく、母親としての渡瀬マキから放出されている。"母性"というのは他の何物にも代えられることのできない普遍的な強さである。やはりリンドバーグのサウンドの核は、表現の方法が変わろうとも「強さ」なのだ、と改めて実感する。
 また、今作に収録された10曲の詞はそれぞれ、渡瀬マキが実在する人物をテーマに書き綴ったもの。つまり、このアルバムの中には10人の人間の人生があるのだ。そう思いながら1曲1曲を味わってみてほしい。きっとそこには、生きることの難しさと素晴らしさがぎっしりと詰まっているはずだ。特にNY同時爆破テロへのメッセージを含んだ「our love」には、特別な重みがある。そして、その悲劇を目の前にした1人の女性として、母親として、渡瀬マキは「歌う」。

Text by 渡辺麻美(玉川高島屋店)

『LINDBERG XIV』
リンドバーグ-J.jpg




CD
CFC
LCFC-0001
¥3,000(税抜)
2002年1月1日発売

デビューから12年経ち、さらにサウンドに深みが増したリンドバーグの14枚目のオリジナル・アルバム。その長い活動期間に裏打ちされた安定した演奏と、渡瀬マキの以前よりもしっとりとしたヴォーカル・スタイルが、耳に心地よい。

【LINDBERG OFFICIAL WEBSITE】http://www.flight-lindberg.com/

inserted by FC2 system