Tripmeter

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Tripmeter

「声が痛いよ 胸をしめつけてる」
耳から流れ込んでくるのは心の奥から聞こえる声。
Tripmeterが発するのは「コンプレックスを抱え込んだ激しいラヴソング」。

(初出『Groovin'』2002年1月25日号)

Tripmeter-A.jpg ヴォーカル「PYON」の歌声と「RYOTA」のギターとの「存在のぶつかり合い」が、心の葛藤のようにも思えるTripmeterの音楽は異色だ。心の奥深くに訴えかけるPYONのヴォーカルは自らの身を切りながら発しているようにも聞こえる。元々バンドを結成していたが物足りなさから2人で路上ライヴを開始して今に至る彼らの経歴からも、音楽に対する強い情熱が伝わってくる。
 そしてTripmeterの音楽には鮮やかな「色」がある。聴いて場面が浮かぶ事はあるが、この「切ない幸福」を聴いた時にビビッときた何かが、その後1stシングル『ガーネット/GO AWAY』のジャケットを見て何ものだったのか、はっきりした。ジャケットの片面は鮮やかな「青」で、もう片面は「赤」。私の頭にビビッと浮かんだのはまさにその2つの「色」だったのだ。どうやら彼らの音楽には、あらゆるものが共通して持つ「二面性」がはっきり存在しているようだ。ゆるやかに、時に激しく移り変わる心情が、この「青」と「赤」という相反する2色にはっきりと区別して表される。鎮静作用のある青と情熱的な赤が交互に浮かび上がる。これが彼らの楽曲のひとつのテーマ「コンプレックスを抱え込んだ激しいラヴソング」の表情なのだろう。だから私は当初彼らがこのテーマを作った理由を深く考えかけて、一瞬でやめてしまった。その答えは彼らが発信し続ける音楽から伝わってくるから、いくら頭で考えても仕方がないのだ。
 本当は誰も器用に恋愛なんて出来ていないのかもしれない。自分の中に抱え込んだ「マイナス思考」が事ある毎に表へ出てきていろんなものを遮り、自信すら些細な出来事で粉々になる。これは特別な一部の人の悩みではない。だからTripmeterの音楽を聴いた誰もがその中に映し出された自分の姿に気付いてしまう。彼らの曲を聴いて心が揺らがない人はきっといないはずだ。
 もし少しでも彼らに関心を持った人がいたら、ぜひ今作と併せて1stシングル『ガーネット/GO AWAY』も聴いてほしい。そうすればより一層彼らの音楽を自分の中に感じることができるし、そこから新たな自分に思いがけず出会えるかもしれない。眠っている意識が目を覚ますかもしれない。それが果たして吉と出るか凶と出るかはわからないが、日々新しい何かを求める気持ちを抱いている人には1度聴いてほしい要注目のアーティストだ。

Text by 二宮万里(編集部)

『切ない幸福』
Tripmeter-J.jpg




Maxi Single
DREAMUSIC
MUCD-5004
¥1,000(税抜)
2月6日発売

ヴォーカル「PYON」の歌声と「RYOTA」のギターとの「存在のぶつかり合い」が訴えかけるようなTripmeterの音楽。切ないギターの響きに乗った痛切でストレートな思いは、聴く者の心を掴んで離さない強さを持つ、新人とは思えないほどの存在感の強い1枚。


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