BOO

山下達郎の「SPARKLE」を大胆にもサンプリング!?
BOOの『smile in your face featuring MURO』は、
大きな話題になること間違いなし！の注目作。

（初出『Groovin'』2002年2月25日号）

　イントロのナチュラル・トーンのカッティング・ギターを聴いて「え？」と思う人も多いだろう。そう、この曲はあの山下達郎の「SPARKLE」をサンプリングしたもの。昨年末にヒップホップ・ユニットKICK THE CAN CREWが「クリスマス・イブ」をネタにラップした曲を発表し、世間をあっと言わせたことは記憶に新しい。だがこの曲は、導入部にラップが入っているものの、基本的に歌モノである。サンプリングという共通の手法を用いてはいるが、その上に言葉を乗せていくのではなく、そこに新たなメロディをミックスさせているという点で、さらに大胆な試みであるといえる。
　さて、こんな大それたことを一体誰が？と思われるだろう。この『smile in your face featuring MURO』は、山下達郎をリスペクトしてやまないMURO、彼のKing of Diggin' Productionに所属するソウル・シンガーBOO、そして新進気鋭の作曲家兼アレンジャーの松本良喜の共同作業によって生まれたもの。その経緯はよく知らないが、きっかけは「あの曲大好きなんだよね」〜そんな純粋な気持ちに違いない。それは今作を聴けばすぐにわかること。まさに愛ある引用なのだ。「SPARKLE」のサウンド世界を受け継いだメロディ・ライン、BOOのハイトーン・ヴォーカルが響き渡る時の高揚感と爽快感、R&Bフレーヴァーになっているが、軽快さを失わないトラック・メイキング…それらを引き出したあの1曲に対する愛情が今作には溢れかえっている。またそうした聴き方だけでなく、サンプリング元を知らない若い世代にも、ポップ・ミュージックとして純粋に楽しめるものだと思うので、ぜひチェックしてみてほしい。
　今作は、奇しくも「SPARKLE」と同アルバムに収録された楽曲がヒット中というタイミングもあり、間違いなく注目されることになるだろう。それだけでも話題になる可能性だってある。しかしこの曲が、日本の偉大なポップ・ミュージックに捧げたオマージュであり、純粋に音楽を愛する者たちの新たな挑戦だということも忘れないで欲しい、そう思うのだ。

Text by 鮎川夕子（編集部）