KAB.

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KAB.

KAB.の3rdアルバム『向日葵』は、
ちょっと切ない青春の描写が詰まった好作品。
ノスタルジーではなくリアルで現在進行形の11曲をぜひ体験して欲しい。

(初出『Groovin'』2002年3月25日号)

KAB-A.jpg "僕"という一人称の表現にはなんとなく切ない響きが漂う。言葉自体が持っている無垢な少年性の切なさかもしれない。また、自分をさらけ出す感のある女の"私"と、プライドがある故に自分を押し殺してしまいがちな男である"僕"という見方をすれば、我慢している分だけそんな切なさが増すような気もする。でもそれはやはり僕が男だから感じることなのだろうか?
 KAB.の歌は全て"僕"で歌われている。「僕の足音」「ぼくたちの卒業」「僕は、元気です」など、タイトルに"僕"という言葉が使われている曲も多い。戸籍上は女、でも心の中は男、という複雑な生い立ちを持つKAB.の、心の性別にしたがって生きていこうとする決意のあらわれであるような気もする。
 3rdアルバム『向日葵』はそんな"僕"の目から見た、ちょっと切ない青春の描写が詰まった作品。青春なんて得てして切ないものだけど、若さ故の楽観主義がその切なさをカヴァーしているのが聴いていて眩しい。また、「目黒川」や「日吉」なんていうマイナーな地名が多いのもKAB.の特徴である。本人だけが知っているモデルや風景、出来事が下地になって歌が出来ているのかも知れないが、「みんながんばれ!」などという抽象的な応援ソングがもはや嘘っぱちに響くこの時代に、個人的な思い入れが喚起される"僕"や"目黒川"といったキーワードが散りばめられた歌詞の方が断然リアルに響くものだ。そしてそのリアルな風景に共感を覚え、元気を貰うことも多い。
 アルバムの最後に収録の「僕は、元気です」という曲のラストの歌詞はこんな感じだ。"僕は、元気です。変な、頭です。もしも懐かしさを感じたら電話でも下さい。飲みに行こう、日吉へ!!"この飾らないリアルな言葉こそ、KAB.の世界だ。

Text by 高瀬康一(編集部)

『向日葵』
KAB-J.jpg




CD
イーキューブ
EQCA-50003
¥2,857(税抜)
発売中

KAB.の3rdアルバム『向日葵』は美メロ満載の青春讃歌集。"変な頭"のルックスからは想像できない王道ポップスのアレンジは、椎名林檎、矢井田瞳、等アーティストのライヴ・サポートで活躍中の西川 進。数曲でKAB.自身も担当している。

【KAB.公式ブログ「徒然KAB.日記」】http://blog.goo.ne.jp/kabfc/

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