ジェイド・アンダーソン

ARTIST PICK UP

ジェイド・アンダーソン

私たちをコバルト・ブルーの海の底へと誘ってくれる
ニュー・ディーヴァ、ジェイド・アンダーソン!
アメリカの個性的なニュー・ディーヴァ達に対するロンドンからの返答、それが彼女だ!

(初出『Groovin'』2002年3月25日号)

ジェイド・アンダーソン-A.jpg 去年から今年にかけて、女性R&B界はかなり活況の様相を呈している。しかもR&Bという枠にはとらわれず、各アーティストの個性やタレントが特徴的に際立っているようだ。今年のグラミー賞にもそれぞれ8部門、7部門でノミネートされたオーガニックR&B系のアリシア・キーズやインディア・アリー、ジャズやロックを取り入れたのミクスチャー系のメイシ−・グレイ、ジル・スコット、若干20歳でコンポーズまでを手がける天才肌アイドル、クリスティーナ・ミリアンなど、それぞれの独自性が上手に作品に昇華されていて、聴く者を魅了している。これはただ"売る"ためだけに曲ごとにプロデューサーやコンポーザーを配置して、ヒップな曲は誰々、ポップな作品にはあの人、バラードの定番は彼という様に、多くの作品がコピーのように生産され、氾濫していた不毛の時代への反発として、個性的なディーヴァを求める方向へ移行していったのだろう。
 そのような状況下でUKから登場したのが、このジェイド・アンダーソンである。1981年生まれの彼女は、あのイエスのヴォーカリストであるジョン・アンダーソンの娘として、幼いころから音楽に囲まれて育った素養のせいか、そのヴォーカル・スキルはもちろん、音楽的才能やセンスはこのデビュー・アルバム『ダイヴ・ディーパー』の中に満ち溢れている。特に父親の影響かどうか定かではないが、アルバム全体に音と音の隙間を埋めるように、シンセ・サウンドが常に鳴っている。そういった今では割と珍しいサウンド・プロダクションは、『ヴェルヴェット・ロープ』のころのジャネット・ジャクソンにジャム&ルイスが施していたプロデュース・ワークに相通ずるものがある。
 もうひとつの特徴としては、彼女自身の多重録音によるコーラスである。このコーラスが殆ど全曲に配されていて、先行シングルとしてヒットした「Sugarhigh」でも、彼女の実にしなやかなコーラスは素晴らしい味を醸し出している。またメジャー・レーベルの争奪戦の中から、ソニー・レコードという大手レコード会社と契約しながらも、有名プロデューサーの起用は避け、一緒にデモ・テープ作りをしてきた音楽パートナーである、元エッグ&アリスのエッグ・ホワイトが全面的にプロデュースを手がけている。それが功を奏してか、デビュー・アルバムにしてコンセプト・アルバムのような統一感が感じられるのも魅力のひとつだ。しかもUKからデビューするR&Bアーティストの多くは、アメリカン・ソウル・ミュージックをリスペクトしている人が多いのか、定番のR&Bスタイルを引きずったオーソドックスなスタイルが一般的だが、ジェイド・アンダーソンの場合は、もちろん先人の良い遺伝子は継承しつつも、彼女いわく「人生の浅瀬にとどまっている人たちを深い海に連れ込む」ような深淵なサウンドが特徴的だ。それでいてメロディーはとてつもなくキャッチ−で、2ndシングルにもなる「Sweet Memories」などは、スティーヴィー・ワンダーへのオマージュ的な、素敵なポップ・ソングに仕上がっている。
 このアルバムを聴けば、ジェイド・アンダーソンという個性的なニュー・ディーヴァが、コバルト・ブルーの海へ深く潜っている彼女自身の世界へと、私たちを引きずり込んでくれるだろう。

Text by 五味渕雅之(朝霞店)

『ダイヴ・ディーパー』
ジェイド・アンダーソン-J.jpg



CD
Sony Records Int'l
SICP-114
¥2,000(税抜)※2ヶ月限定特別価格
3月27日発売

リリカルなコーラス・ワーク、重厚なサウンド、キャッチーでフレッシュなメロディが重なり合った、デビュー・アルバムにしてパーフェクトなアルバム。R&Bという広い海原の指針となりえるような素敵な楽曲ばかり。ヒット・シングル「スウィート・メモリーズ」「シュガーハイ」を含む全15曲収録。日本先行発売、日本盤のみボーナス・トラック収録。

【ジェイド・アンダーソン ソニーによるオフィシャルサイト】http://www.sonymusic.co.jp/Music/International/Arch/SR/JadeAnderson/

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