CHEMISTRY

デビューから約1年、常にCHEMISTRYらしさを失うことなく
快進撃を続ける2人から届いたニュー・マキシ・シングルは、
彼らにとっても、ファンにとっても、本当に大切な1曲。

（初出『Groovin'』2002年4月25日号）

　結婚がリアルなものとなった年齢のせいだろうか、ここ数年ベターハーフの伝説を思い出すことが多い。元々は1つの強い個体であった人間を、その力を激しく恐れた神様が男と女に引き裂き、それぞれを別の時間、別の場所に放り投げてしまった。だから人は、完全な人間になるために星の数ほどの異性の中に自分の片割れを探し続けるのだという、あの話である。昔は、「よく出来たお話ね」ぐらいの認識だったのだが、今となっては切実なリアリティを伴ってその出会いの難しさを理解出来てしまうのだから、まったく嬉しいやら、哀しいやらである。
　さて、メディアの熱い視線を集めながらの衝撃的なデビューから、順調なシングル・リリース、そして1stアルバム『The Way We Are』の大ヒット、最近ではVoices of KOREA/JAPANの一員として、FIFAワールドカップ公式テーマソング「Let's Get Together Now」を発表するなど、名実ともに日本のトップ・アーティストとなったCHEMISTRY。彼らのニュー・マキシ・シングルが、この「君をさがしてた〜New Jersey United〜」。みなさんお気づきのとおり、2ndシングルのダブル・リード曲であり、アルバム『The Way We Are』にも収録されていた、あのナンバーである。彼らもインタビュー等で「大好きな曲です」と公言し、ファンの間でも特に高い人気を誇る名曲が、今回リカット・シングルとしてリリースされることになった。
　しかし今作が通常のリカット・シングルと違うのは、ヴォーカルはすべて録り直し、アレンジに関しても、鍵盤楽器等の再録が行われ、結果的には新曲に近いほどの新鮮な印象を与えるものになっていること。そして何よりも大きいのが、米国New Jersey在住のゴスペルクワイアによる重厚なコーラス。楽曲全体にふんだんに取り入れられた、荘厳で力強い歌声は、今作において非常に大きな役割を果たしているのだが、その理由は後ほど。
　そうして新たなサウンドに生まれ変わったこの曲だが、原曲のタイトル（「君をさがしてた〜The Wedding Song〜」）が示すように、人生を共に歩もうと決めたパートナーへの思いを歌ったもの。個人的に、ウエディング・ソングは最大級のラヴ・ソングだと思っているのだが、今作はまさにそう。ある意味、究極のラヴ・ソングであると思う。さらに、相手の未来も含めて愛していこうという決意、出会ったことへの感謝といったものも素直な言葉で綴られていて、きっと女性であれば、聴いているだけで幸せな、とても満たされた気持ちになってしまうだろう。
　2人のヴォーカルについても、デビューから1年が経過し、初めてのツアーを終えた後ということもあってか、非常に安定感のある歌声を聴かせてくれるし、楽曲がすでに体になじんでいるのだろうか、表現力もいっそう豊かなものになっている。そして、そこに前述のゴスペル・コーラスが華やかに加わってくる。まるで曲中に描かれた幸せな奇跡を祝福しているかのように。さらに後半はハンドクラップとパイプオルガンの音色が加わり、教会での結婚式さながらの臨場感を醸し出している。このコーラスによって、楽曲のテーマがより明確になっているのはもちろんのこと、サウンドにヒューマニティーとドラマ性を持たせているのだと思う。
　この楽曲は、今後彼らにとって一層重要なものになるだろうし、新たなウエディング・ソングのスタンダードして多くの人に愛されるに違いない。さて、あなたのベターハーフは見つかりましたか？それとも、まだ探している途中ですか？

Text by 鮎川夕子（編集部）