中島みゆき

ARTIST PICK UP

中島みゆき

中島みゆきの最新シングル・コレクションが登場!
当代きっての歌うたいが歩んできた足跡を辿る、メモリアルなアルバムとなった今作。
その歌に込められた生命力を感じ取ってみてほしい。

(初出『Groovin'』2002年4月25日号)

中島みゆき-A.jpg 人間は他人の生を目の当たりにした時に、改めて自分の生を確認し、そして見つめ直すのかもしれない。生は人生や生き方と置き換えてもいいだろう。例えば、テレビのドキュメンタリー番組。題材は何であれ、そこには右往左往しながら、なんとか生き抜こうとする人間の姿がそのまま映し出される。もがき苦しみ、涙を流し、だけどそんな時だってささやかな笑顔を浮かべる。その姿に人間の尊い生命力を感じ、私はしばし呆然となる。そして、画面を通して、そんなたくましい生命力に触れた時のような感覚を、私は中島みゆきの歌にも感じている。彼女の曲に存在する生々しい生の力、命の鼓動、乱舞する魂、愚かで素晴らしい人間の姿。そう中島みゆきの歌はドキュメンタリーなのである。多くのアーティストがフィクションとしての音楽を量産することにひっちゃきになっているが、彼女は歌に人間の生命の息吹を吹き込んできた貴重なアーティストなのだと思う。
 今作は、それぞれ87年と94年に発表された『Singles』『Singles II』に続くシングル・コレクションの最新作となる。「空と君のあいだに」「旅人のうた」から、ロング・セラーを続ける「地上の星/ヘッドライト・テールライト」まで、シングルとしてリリースされた7作品に収められた14曲を一挙に収録している。そのほとんどがドラマや映画の主題歌となっているのだが、そうした場合心配されるのはアルバムとしての統一感。サウンドが時代を追っていればいるほど、散漫な印象を残すヒット曲集に終わってしまう可能性が大きい。だが今作の収録曲は、私達の記憶の中で当時の出来事と強く結びついているという点では、確かにその時代を映しているかもしれないが、流行に左右されないサウンド・メイキングで、ある意味スタンダード・ソング的な、不変の作品力を保っている。そのため、こうして6年間の時差があるヒット曲が並んでいても、全く違和感を感じることなく聴けてしまうのだ。
 そして何よりも、中島みゆきという当代きっての歌うたいが持つオリジナリティには改めて感服せざるを得ないだろう。彼女の特徴的なビブラートはまるで命のヴァイブレーションのよう。私たちの心をふるわせ、今ここに生きている実感を与えてくれる。そして、時に春の日差しのように優しく穏やかで、時に大地を揺るがす地鳴りのように激しいその歌声は、聴くものを引きつけてやまない力を持っている。また彼女の作るメロディは、ポップだとかキャッチーだとか、そういった形容には収まりきらない。一言で言えば"強い"のだ。そしてその強さがあるからこそ、目を逸らしたり、逃げることなく、詞にも人間のありのままの姿を描くことが出来るのだとも思う。そしてここにある歌は、彼女のすべてを持って作り上げられたという意味で、中島みゆきというアーティストのドキュメンタリーでもあるわけだ。
 今作は従来のファンにとって、彼女の創作活動を改めて振り返る重要な作品になると思うが、「地上の星/ヘッドライト・テールライト」で初めて中島みゆきの歌を体験した若いリスナーにもぜひ聴いてもらいたい。彼女について全く知識がない人にも、きっと本能的に何かを感じ取ってもらえるはずだ。先入観を持った耳で聴くのではなく、フラットな心で聴いてみて欲しいと思う。フィクションよりも数段ドラマティックな人間の生き様と、ほとばしる生命力を描き続ける中島みゆきの、音楽の旅はまだ終わらない。

Text by 鮎川夕子(編集部)

『Singles 2000』
中島みゆき-J.jpg




CD
ヤマハミュージックコミュニケーションズ
YCCW-00037
¥2,800(税抜)
発売中

「空と君のあいだに」から、ロング・セラーを続ける「地上の星/ヘッドライト・テールライト」までのシングルを収録した、『Singles』『Singles II』に続くシングル・コレクションの最新作。すみや全店で『Singles 2000』をお買い上げの方に、先着で中島みゆきオリジナル・カプセル・アラーム・クロックをプレゼント。

【中島みゆき OFFICIAL SITE】http://www.miyuki.jp/

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