つじあやの

ARTIST PICK UP

つじあやの

春がやってきました。つじあやのの季節です。
うららかな午後は彼女の歌声を聴きながら、恋物語に浸ってみましょう。
約1年ぶりのニュー・アルバム『BALANçO』リリース。

(初出『Groovin'』2002年4月25日号)

つじあやの-A.jpg つじあやのが近頃ウレテイル。さて、「ウレテイル」というこの日本語に漢字を当てはめてみよう。もちろん「売れている」も正解だが、私なら「熟れている」と当てはめたい。様々な果実にそれぞれの旬の季節があるように、つじあやのの季節はまさに春であり、今11粒の実を結んで我々の元に届けられる。
 京都鴨川発のメガネがトレードマークのオンナノコ。ウクレレ片手に恋を歌う。そんな彼女の楽曲で特筆すべきは歌詞の中に登場する一人称の表現が「僕」、二人称が「君」であるということ。だからといって彼女がボーイッシュな雰囲気を持ったアーティストでは決してない。むしろかわいらしい少女のようなルックスの彼女。それなのに「僕」と歌う姿が不思議と違和感を抱かせることなく、自然と我々の目に、耳に、吸い込まれていくのは何故だろうか。
 歌の中に登場する主人公の「僕」は、片思い中だったり、恋愛真っ最中だったり、失恋していたりと、彼女の歌の一つ一つには、それぞれ「恋をする」という行為に対して一喜一憂する登場人物が存在している。単純な考え方をすると、「僕」という主人公がオトコノコなら、つじあやの流"恋の歌"は、いわゆる恋するオンナノコの歌ではなく、「恋される」オンナノコの歌と解釈できる。そこに、つじあやのが「僕」という一人称で歌っても違和感がない秘密が隠れているような気がするのだ。
 ところで私は、その直球ではない恋歌に、そこはかとないエロティシズムを感じずにはいられない。そして、その一見爽やかな雰囲気の中に見え隠れするエロティックな部分、そして、実は恋にまつわる情感がたっぷり込められた歌詞(ポップでかわいらしい楽曲により気付きにくいのだ)、これらがつじあやのの最大の魅力だと私は思う。この感覚は、例えばスピッツの楽曲に感じられるそれによく似ている。彼らの奏でる少し切ない春の午後の日差しを思わせる音には、草野マサムネ氏のずば抜けたセンスにより選ばれたまろやかな日本語が溶け合っているのだが、その歌詞の端々に、どこかエロティックな要素が隠し味のようにちりばめられていた。実際つじあやの本人も、スピッツの楽曲に触れていたようなので、彼らの遺伝子の良い部分を受け継いでいるのではなかろうか。
 そんな彼女の約1年ぶりのアルバムである。タイトルの『BALANçO(バランソ)』はポルトガル語で"ブランコ"の意。シングルとしてリリースされた「恋人どうし」「愛のかけら☆恋のかけら」を含む全11曲。今作でつじあやのは多数のミュージシャンとの共演を果たしている。シングルのプロデュースを手がけたDr. Strange Loveの根岸孝旨、斉藤和義、Double Famousの青柳拓次&栗林慧、そしてウクレレと言えばこの方、関口和之。彼らとの出逢いにより、シンプルなウクレレという楽器の音色の持ち味を生かしながらも、過去の作品と比べてややゴージャスな仕上がりとなっている。
 もうご存知の方も多いかとは思うが、昨年、メガネと並ぶ彼女のトレードマークとも言えるおさげ髪に別れを告げたつじあやの。その変身ぶりには目を見張るものがあったが、つじあやのというオンナノコ、アーティストの本質は変わらないし、変わらないで欲しい。同じメガネっ娘として、エールを送ろうと思う。んか?雑誌のグラビアだけじゃわからない彼女達の魅力を知りたいアナタは、この歌を聴くしかないでしょう!

Text by 渡辺麻美(玉川高島屋店)

『BALANçO』
つじあやの-J.jpg




CD
ビクターエンタテインメント
VICL-60875
¥2,900(税抜)
発売中

ウクレレで恋物語を歌うオンナノコ、つじあやののニュー・アルバム。うららかな春を想起させるしっとりとした歌声は、この季節にぴったり。シングル「恋人どうし」「愛のかけら☆恋のかけら」や、斉藤和義とのデュエット曲「君に会いに行きましょう」を含む全11曲。

【つじあやの ホームページ】http://www.tsujiayano.com/

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