エスカーゴ

ARTIST PICK UP

エスカーゴ

今年の1月に1stアルバム『鳩』をリリースして一区切りつけた彼ら。
今までと少し系統の違うニュー・シングルは、
新たなステップを予感させる"深い"ロックだ。

(初出『Groovin'』2002年4月25日号)

 九州出身のアコースティック・デュオ、もとい、エレキ・デュオ、エスカーゴがニュー・マキシ・シングル『空想ゲーム』を4月24日に発売した。ゲーム好きのメンバー山本智幸が"素直に愛せるもののうたをつくる"というコンセプトから書きあげた、愛すべきゲーマーの歌である。コントローラを握るだけで、400キロでぶっ飛ばしたり金をつかいまくったり打ち落としたり愛し合ったり。アイラブゲーム、空想ゲーム。
 一聴すると楽しそうな歌だが、何回も聴いているうちにこの歌はただのゲーマー賛歌ではないように思えてくる。愛すべきものを歌にしたはずなのになぜかマイナー・コード、寂しささえ漂うこの空気は一体何なのか。結局この曲はゲームで楽しんだ後の虚しさがテーマだと思わざるを得ない。もっと言えば、ゲームという名の"慰め"や"まやかし"に没頭するあまり本質が見えなくなった男の嘆きの歌である。そしてそれは、楽しんでるのに、これでいいはずなのに、なぜかふっと空を見上げて虚しさを感じてしまうような人生を比喩しているというのは考えすぎだろうか。現在迷走中(らしい)山本が"シングルっぽいものを狙わない"という狙いと、焦りの中で生み出したこの曲は、結果的に深い本質を突いたように思える。
 その昔、同じ九州出身の財津和夫が「人生ゲーム」という歌の中で「幸せなんかがあるならばそれはなぐさみのことだろう」と歌ったが、人生を慰めばかりのクソゲーにしないために僕らは何を見つければいいのか?この曲を聴いてちょっと考え込んでしまった。
 サウンドに関してもふれておかねばならない。長田 進や古田たかし、花田裕之が参加して作り上げた強力グルーヴが、シューティング・ゲームのごときスピード感を醸し出して実にカッコいい。熱さを秘めたリズムや縦横無尽に空間移動するキーボード、最近のJ-POPシーンではあまり出番の無い王道ギター・ソロなど、ルースターズ〜佐野元春〜奥田民生と受け継がれたロックの魂は確実にこの曲に宿っている。そう、これは紛れもなくロックなのだ。

Text by 高瀬康一(編集部)

『空想ゲーム』
エスカーゴ-J.jpg



Maxi single
キングレコード
KICM-1051
¥1,143(税抜)
発売中

カップリングの「さくら〜ちりゆく男〜」は、自称「散りゆく男」山本の散り具合を見せていくこれまた男気ロック。「きついから帰る」は野田智洋が27歳という現状と決意を託した重要曲。そんな3曲をパッケージしたこのマキシ、ジャケもいい感じ!初回盤のみ「空想くん」フェルトステッカー封入。


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