仲宗根かほる

ARTIST PICK UP

仲宗根かほる

ウェスト・コーストの精鋭ビッグ・バンドを従え、
軽やかにスウィングするエンジェル・ヴォイス!
まさに"キュート"という言葉がぴったりくる素晴らしい歌声。是非お試しあれ。

(初出『Groovin'』2002年4月25日号)

 最近の日本のジャズ・シーンにあって、女性アーティストの活躍は目覚ましいものがある。特に才能溢れるヴォーカリストが次々と現れ、新しいエッセンスを持ち込んでいる。今作で3作目となるニュー・アルバムをリリースする仲宗根かほるも、素晴らしい歌声の持ち主であるばかりでなく、抜群のタイム感も兼ね備えた個性的なヴォーカリストである。デビッド・マシューズをアレンジに迎え、ニューヨークで録音された話題作『フレグランス』、ドン・ランディ−を迎えてロサンゼルスで録音された前作『パパはマンボがお好き』、そして前作同様ロサンゼルスで録音されたのが、この『TABOO』である。同じロサンゼルス録音といっても、前作はピアノ、サックスなどをメインに比較的シンプルなアレンジであったのに対し、今作はビッグ・バンドを従えての独特なスィング感と彼女のエンジェル・ヴォイスが何とも言えない雰囲気を醸し出している。
 沖縄県宮古島出身の彼女は、9歳の時にジャズ・ヴォーカルのレコードを初めて聴き、すぐにジャズ・シンガーになりたいと思ったという。多くの称賛を受けている仲宗根かほるの個性的なヴォーカル・スタイルは、持って生まれた才能と声質だけではなく、ジャズへの造詣の深さと情熱から培われたと言っていい。それは、アナログ・レコードの良さに惚れ込み、一時期などはさらに良い音で聴きたいが為に真空管にまで興味を持ったというのだから、ジャズへの探究心は半端ではない。その筋のコレクターならまだしも、それほどの情熱とこだわりを持っているアーティストも珍しいだろう。ちなみに、彼女は世界的なマイク・メーカーSUREの正式なモニターでもある。
 今作のアレンジはマイケル・パターソンとビル・カンリフが手掛けている。マイケル・パターソンはウディ・ショウやフィル・ウッズ、ローランド・ハナ等、ジャズ・ミュージシャンだけでなく、ルーカス・フィルムやディズニー・フィルムにも作編曲を提供している人物。また、ビル・カンリフはあのバディ・リッチ・ビッグバンドをスタートにジョー・ヘンダーソンやフレディ・ハバードのグループに在籍し、最近はナタリー・コールのキーボーディストとしても活躍している。共に原曲を尊重しながら、仲宗根かほるの特徴ある声を充分に理解し、今の時代に合致した、楽しめるビッグ・バンド・アレンジを施している。
 また、スペシャル・ゲストとして、ブライアン・セッツァー・オーケストラのドラムスとして、またチャカ・カーンとの共演でも知られるバーニー・ドレッセルや、ジョージ・ベンソンやアル・ジャロウ等のレコーディングにも参加しているコンテンポラリー・サックス界の雄、ブランダン・フィールズ、そして解散した今でも高い人気を誇るグループ、シーウィンドのベーシストとして良く知られるケン・ワイルドなどが参加。更に現代的要素を加味している。
 全体を通して聴いてみると、なぜか古き良き時代のアメリカの風景(映画のワンシーンのような)が浮かんでくる。音を聴いて絵が浮かぶような作品はそう多くはない。しかし、そういた作品には必ずアーティストの育った環境や強烈な個性が滲み出ている。今作は彼女の強烈なオリジナリティによって、間違いなく絵が浮かぶアルバムになっていると思う。ウェスト・コースト・ジャズが好きな彼女にはぴったりのサウンドに、キュートな歌声が絶妙に溶け合った素晴らしい作品である。

Text by 堀尾康弘(東越谷店)

『TABOO』
仲宗根かほる-J.jpg




CD
M&Iカンパニー
MYCJ-30136
¥2,667(税抜)
発売中

昨年4月発表のメジャー第2弾『パパはマンボがお好き』に引き続いてのロサンゼルス録音となる新作がこの『TABOO』。西海岸の腕利きミュージシャンをバックにスタンダード12曲を収録。スウィートな囁きと豪華なサウンドが絶妙に溶け合う超話題作!


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