Orange Pekoe

ARTIST PICK UP

Orange Pekoe

爽やかな風の中、やわらかい太陽の下…
情景を喚起させる音楽が聴く者をそっと包み込む。
オレンジペコーの1stアルバムはインディーズ時代の楽曲を含むベスト盤的内容。

(初出『Groovin'』2002年5月25日号)

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 最高級の紅茶の葉をユニット名に選んだオレンジペコー、その曲は名の通り上品で気品ある曲ばかりだ。彼らの音楽は時を止め、安らぎの空間を与えてくれる。そして目を閉じればカフェ特有のコーヒー豆を挽いた後の香ばしい匂い、紅茶を入れた直後の優しさに包まれた香りがふわっとわきあがってくる。ナガシマトモコと藤本一馬の2人が作り出す音楽は、情景を喚起させる"仕掛け"をたくさん用意して、聴く者をさまざまな世界へ導いていく。あるときは洒落たカフェだったり、真っ青な海の見える砂浜だったり、夜の落ち着いたバーだったり…。そしてその世界は彼らのシングルが出るたびに増えていくことに驚かさせられもする。
 4月にリリースされたシングル「Happy Valley」でメジャー・デビューしたばかりの彼らが早くもアルバムをリリースする。今作はインディーズ時代にリリースしたすべてのシングル楽曲も含む、1stアルバムでありながらベスト盤的な内容である。
 ボサノヴァのリズムをベースに、春っぽい軽快さ、ブライトな透明感を感じさせる彼らの代表曲「LOVE LIFE」。アコースティックなバラード・ナンバーをまるで大地の鼓動のようなニュー・アレンジで聴かせてくれる「bottle」。この2曲はミニ・アルバム『orangepekoe』からの選曲。ジャズやソウルの要素を含みながらもポップスとしても完成度の高い「太陽のかけら」は、彼らの本領が発揮された1stマキシから。さらにジャジーで大人っぽいムードが聴き手を包み込む「やわらかな夜」や、60年代の映画音楽を連想させる、オーケストラをフィーチャーしたスウィンギーな最新シングル「Happy Valley」を含むこれら全14曲は、クオリティの高さとポピュラリティを備え、純粋にその1曲1曲を聴いて楽しんでも、BGMとして心地よく聴いてもよい。そしてシングル曲だけを見ても、彼らの音楽がジャズ、ボッサ、ソウルなどを吸収した幅の広いものだとわかる。
 ギター&作曲&アレンジ&プログラミングの藤本一馬はビートルズに影響を受けてギターを弾き始め、ブルースやソウルを経由した後、ジャズやブラジルものにハマっていく。一方ヴォーカルのナガシマトモコはスティーヴィー・ワンダーをきっかけにソウルやブラックに心を奪われ、その後ジャズやボサ・ノヴァへと嗜好を広げていく。2人の共通点はジャズ、ソウル、ボサ・ノヴァであり、オレンジペコーの音もそのあたりにベースはあるのだが、互いにヘヴィ・リスナーなだけに、多様な音楽性がサウンドに反映され輝きを増す瞬間がある。そんな幅の広いオレンジペコーの世界をリアルに映し出すには、シングルよりも、タイプの違う様々な曲を収録できるアルバムというフォーマットの方が向いているのだと思う。
 そして彼らの世界は音楽とヴィジュアル表現との呼応によって完結する。音楽にぴったりのジャケットを届けてくれるのはイラストレーターのカンバラクニエ。スタイリッシュで鮮やかで、自然なおしゃれ感がオレンジペコーの音楽と見事にシンクロする。イラストを含めこのアルバムに散りばめられた断片の数々が、聴き手に豊かな安らぎを与えてくれるだろう。それはオレンジペコーの世界が幸福感に満ちているからに他ならない。

Text by 足立進也(秦野店)

『Organic Plastic Music』
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CD
BMGファンハウス
BVCS-21027
¥2,913(税抜)
発売中

ジャズ、ボッサ、ソウルをベースに心地よい音楽を届けてくれるオレンジペコー。今作はデビュー・アルバムでありながらインディーズ時代からの楽曲を含むベスト盤的な、豪華な内容。既に大物の風格を感じさせるスケール感のあるユニットである。初回盤のみデジパック仕様&1stライヴ・ツアー先行予約情報を封入。

【orange pekoe 公式サイト】http://www.orange-pekoe.com/

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