EGO-WRAPPIN'

ARTIST PICK UP

EGO-WRAPPIN'

生音の凄さ、生身の人間が奏でる音のしなやかさ…。
EGO-WRAPPIN'だからこそ表現できる世界が、ここにある。
熱さとクールさを兼ね備えた待望のアルバム、遂に完成。

(初出『Groovin'』2002年6月25日号)

EGO-WRAPPIN'-A.jpg 彼らほど、鮮やかな「色彩感」を聴く者に強く与えられるアーティストがいるだろうか?実はこの「色彩感」というのは、意外と表現するのが難しい気がする。音楽作品というものは、インストゥルメンタルの場合を除いて考えると、たいていは詞の内容とメロディ、そしてサウンド(アレンジ)の3つの要素によって、その方向性が決定される。またヴォーカリストが男性であるか、女性であるかといった違い、そして詞が日本語で表現されたものなのか、それとも外国語なのか、といったこともその作品の印象なり評価なりを大きく左右する重大な構成要素だったりする。そして我々の様な音楽について語る職業の者は、大抵の場合その便宜性から、音楽作品をこういった構成要素により無意識に分類したがる傾向にあるようだ。例えば「あの曲は○○のようだ」とか、「この曲は○○の影響を受けている」あるいは「あのアーティストは○○系だ」とかいう風に。しかしこういった分類は、先に触れたようにあくまでも音楽について語る上での便宜上から派生したもので、必ずしもその曲やアーティストの本質全てを指し表せるものではない。つまり逆の見方をすれば、こういった単純な分類にリスナーも騙されてはいけないのだ。こんな単純な表現で、到底アーティストの全容なんて表せるはずがないのだから。
 しかしこのように考えると、その全容を言い表すことはできないまでも、比較的簡単に音楽作品の傾向を分類できる音楽性のアーティストと、そうではないアーティストが存在するのもまた事実である。そしてこのEGO-WRAPPIN'について考えると、まさに後者が当てはまるだろう。彼らのサウンドは、いい意味でとても
掴みどころがない。言い換えれば、様々なルーツに根ざし、しかもそこに独特のテイストをブレンドした真似の出来ないサウンドなのだ。例えば彼らの代表作の1つである「色彩のブルース」。古き良き昭和歌謡の香りとジャズ・テイストを独自の比率でブレンドし、またVo.中納良恵の存在感溢れる声と表現力が、1度聴くと耳について離れなくなる。音楽というものはすごく懐が深く、知れば知るほどその深みを教えてくれ、感動を覚えるもの。単に「大人の魅力」とか「アナログ的なサウンドが…」といった言葉で片付けるのは簡単だが、実はそんな決まり切った単語で紋切り型に語り尽くせないのが彼らのサウンドの奥行きの深さであり、それは彼らが心底音楽に惚れているその証とは言えないだろうか?
 さて待望の3rdアルバム『Night Food』が遂にリリースされる。本作でも彼らの制作姿勢は変わらず、自由に伸びやかにそしてしなやかに中納良恵の声は駆けめぐる。彼らのサウンドの大きな特徴でもあるアコースティックな楽器…特に弦楽器の低音の響きとの相性も良く、また力強く響くブラスと張り合うパワーも同時に存在する。そして98年にリリースされた1stアルバム『BLUE SPEAKER』収録曲である「PAPPAYA」のセルフ・カヴァーをはじめ、7/1スタートのドラマ「私立探偵 濱マイク」(NTV系全国25局ネット/毎週月曜22:00〜22:54)の主題歌としてO.A.され、元々EGO-WRAPPIN'のファンであるこのドラマの主演俳優、永瀬正敏からのオファーで書き下ろした新作「くちばしにチェリー」も収録するなど、彼らのファンをずっと続けてきたリスナーにも、きっとワクワクものであろう曲で構成されている。
 様々な情景とリズムと「色彩感」が交錯する中で、彼らが本当に表現したいものは?しかし数学じゃないので、答えは恐らく1つではないはずだ。彼らのサウンドが心に染み込み、そして聴く人それぞれの気持ちが震えるとき、そこから誘導される答え…。この『Night Food』には、そんな答えがいくつも隠されている。それだけ音楽の楽しみ方は多種多様で、その感じ方や奥行きは深いのだ。だから心をできるだけフラットにしてEGO-WRAPPIN'の音に触れるとき、きっと違ったあなたの感性の一面を発見できるはずだ。熱さとクールさの狭間で自由に泳ぐEGO-WRAPPIN'のサウンドの中に、僕は自分だけの安息の地の風景を見た気がした。

Text by 土橋一夫(編集部)

『Night Food』
EGO-WRAPPIN'-J.jpg




CD
MINOR SWING/POLYDOR
UPCM-1003
¥2,800(税抜)
7月5日発売

待望の3rdアルバムは、7/1〜のドラマ「私立探偵 濱マイク」(NTV系全国25局ネット/毎週月曜22:00〜22:54)の主題歌で、EGOファンである主演の永瀬正敏からのオファーで書き下ろした新作「くちばしにチェリー」を含む充実作。1stアルバム収録曲のセルフ・カヴァー「PAPPAYA」なども収録、独特の世界が見事に展開されるグルーヴ感溢れる1枚。

【EGO-WRAPPIN' 公式サイト】http://www.egowrappin.com/

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