ディアマンテス

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ディアマンテス

夏の到来とともに、南から熱いラテン・サウンドと灼熱のグルーヴがやってきた。
さらにパワーアップした沖縄ラティーナ、
ディアマンテスのニュー・アルバム『ADELANTE』リリース!

(初出『Groovin'』2002年6月25日号)

 新世代と呼ばれるアーティストによってさまざまなジャンルの融合がはかられ、多様な進化を遂げてきた音楽たち。現在では、録音機材の発達や世界中の音楽情報の入手が容易な環境がそうした進化にいっそう拍車をかけているのかもしれない。しかし、編集能力を駆使して次々に生み出される音楽に、小器用にこなしているなあと感心はするけれど、感動させられることはそうそうない。沖縄発のラテン・ロック・バンドである彼らディアマンテスも、表面的にはその流れの中にいるように見える。だが、彼らの音楽はもっと深い部分での融合、ぶっちゃけて言ってしまえば血とか土地とか、そういった方法論や記号では解析出来ないレベルでの融合がなされているのではないだろうか。そしてそんなふうに生まれた音楽だからこそ、私たちに深く新鮮な感動を与えてくれるのだと思う。
 奇しくも沖縄返還30周年にあたる今年リリースされることになった、ディアマンテスのニュー・アルバム『ADELANTE』。前作『LIBRE』で3人編成となり、バンドの原点回帰に成功した彼らだが、今作ではさらに沖縄ラティーナを突き詰めている。ラテン・ミュージック特有の腰に来るグルーヴ、熱くセクシーなヴォーカル、扇情的なメロディ、すべてが確実にパワー・アップしている。しかしながらそこに焦りや気負いはなく、心から音楽を楽しむ余裕と、ミュージシャンとしての貫禄も感じられるという、まさに会心の仕上がりなのである。
 また、今作で改めて気づかされた沖縄音楽とラテン・ミュージックの共通点がある。情熱と哀愁、そして壮大さと繊細さを併せ持っていること。さらに音の隙間に土地の匂いを強く感じさせてくれることだ。しかし断っておくが、今作のサウンドにはみなさんが想像する沖縄的な要素(例えば島唄に代表される三線の音色や琉球音階)が色濃く出ているわけではない。主軸になっているのは、むしろ正統派のラテン・ロックである。だが音の端々から、あの島やそこに住む人々が持つたくましさや大らかさがガシガシ伝わってくるのだ。愛するコザ市(元 沖縄市)を讃えた「KOZA MARAVILLOSA」などはそれが顕著な曲だと思う。ラテンのリズムに乗っているのに、思い浮かんでくるのは沖縄の美しい風景と島の人々の笑顔なのである。彼らが常に抱いているあの土地への特別な思いがこんな素敵なマジックを生むのだろうか?
 楽曲の方も実にヴァラエティに富んでいる。10年間温めていたという「ESPERA」のほのかなAORテイストには、歌詞がスペイン語であるにも関わらず、大人の恋愛の切なさみたいなものがじわじわ伝わってくるし、インスト・チューン「瞳を閉じれば」では、いぶし銀のギターがメロウなフレーズを奏でていたかと思ったら、一転してドライヴ感のあるプレイで聴く者の心拍数を上げる。今作は曲順も含め、そうした飽きさせない構成が憎いところだ。そして、比較的ダンサブルなナンバーが並ぶ今作の中では唯一の癒し系と言えるだろうか、渾身のバラード「チカラ ヲ ヌイテ」。この曲に強く沖縄の匂いを感じる人も多いだろうが、じっくり耳に染み込ませていくと、それ以上に故郷を思い出させてくれる楽曲であることに気付くはず。その場所に行きさえすれば必ず私達を包んでくれる、掛け替えのない人達の温もりを感じさせてくれるのだ。さらに間奏に方言の語りを取り入れることで、楽曲に大きな包容力と優しい説得力を持たせている。
 踊って、煽られて、癒されて、元気をもらって、なんだか旅をした後みたいな充足感を与えてくれる今作。改めてディアマンテスというバンドのスケールの大きさを感じたアルバムである。

Text by 鮎川夕子(編集部)

『ADELANTE』
ディアマンテス-J.jpg




CD
M&Iカンパニー
MYCD-30144
¥2,857(税抜)
発売中

前作『LIBRE』で3人編成となり、バンドの原点回帰に成功したディアマンテスの最新作は、自然体で音楽を楽しむメンバーのアイデアが凝縮されたアルバムに仕上がった。特にダンス・チューンはこれからの季節にぴったり。さらにパワーアップした沖縄ラティーナを堪能あれ。

【ディアマンテス 公式サイト】http://www.diamantes.jp/

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