paris match

ARTIST PICK UP

paris match

ハイセンスなサウンドが風景に彩りを与える。
人肌のぬくもりさえ感じさせるparis matchの3rdアルバム『type Ⅲ』は
上質な大人達へ贈る、良質なポップ・アルバム。

(初出『Groovin'』2002年6月25日号)

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 この間、久しぶりにスタイル・カウンシルのアルバム『CAFÉ BLEU』を引っ張り出してきてプレイヤーにかけてみた。…やっぱり素晴らしい。20年近く前にリリースされたものなのに全然古くなんかない。ポール・ウェラーの才能が爆発し、耳ざわりの良い曲、ちょっとひねりの聴いた曲がいい具合にアルバムの中に配されていた。
 有名な話だが彼らのグループ名"paris match"は、このスタイル・カウンシルの1stアルバム『CAFÉ BLEU』の中の1曲、「the paris match」から取られたものである。この曲は少しけだるい感じが心地よい、ブルージーでとってもお洒落な1曲。今風にいうとカフェ・ミュージックとなるのだろう。こうしたグループ名の由来にもparis matchの音楽のルーツ、そして方向性が見えてくるような気がしないだろうか。
 さて、paris matchのニュー・アルバム『type Ⅲ』にはUK発のブルーアイド・ソウルやブラジルもの、ジャズ・ファンクなどがほどよくブレンドされた上質のポップスが敷き詰められている。ボサ・ノヴァやラテン・フレイヴァ—を散りばめたエキゾチックな風が聴く者の軽いトリップ感を誘うサウンドには、アーバンリゾート・ポップなんて言葉が合うように思う。アルバムのはじめに置かれた2つのシングル・ナンバー「saturday」「deep inside」でparis matchの世界へと一気に引き込み、聴く者の耳を捉えたまま離さず、いつのまにかアルバムすべてを聴いてしまうような構成になっている。
 また、彼らの曲はツールとしてはデジタルなものを使用しているが、鳴っている音はとてもヒューマンなもの。デジタル機器を用いるとソリッドすぎる音になってしまったり、冷たい音になってしまいがちだが、このアルバムに流れているサウンドはふくよかで人肌のぬくもりを感じさせるものである。そこには作曲・アレンジを担当する杉山洋介の"巧さ"が出ている。彼の作るサウンドはデジタル機器を使いながらも生の音を大切にしたもので、そうすることでparis matchのオリジナリティを最大限に表出させているのだ。
 また古澤大の詞の世界は、息づかいが今にも聞こえてきそうなほどリアルに人の姿が映し出された、しっかりと体温が感じられるもの。風景の描写を織り交ぜつつ人の心の中をさらりと描きだした詞の世界の主人公は、上品で素敵な女性だがいつも少し儚げで、どことなくヴォーカルのミズノマリと重なってしまうのだが…。
 そして、サウンドと詞が人肌のぬくもりならば、ミズノマリの歌声は、人のぬくもりを得て香り立つ香水のようである。歌い上げるタイプのヴォーカリストではない彼女だが、ささやくようなアンニュイな歌声が一瞬で消えることなく、いつまでも残香となって空気中に拡がり漂っていく。
 サウンドからアートワークまで、paris matchの作品はいつもお洒落である。しかし、サウンド面でリードする杉山は、お洒落な音楽を作っているつもりも、マニア受けする音楽を作っているつもりも全くないそうである。彼らが目指しているのは歌メロのしっかりした良質なポップスなのだと言う。丁寧に作られた良質なサウンドは、時間が経っても古くはならない。彼が作っているのもきっとそんな楽曲なのだと思う。スタイル・カウンシル同様、今作が何年も聴き続けられる、風化しないアルバムなのだと僕は今確信している。

Text by 足立進也(秦野店)

『type Ⅲ』
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CD
aosis records
VICL-69077
¥2,900(税抜)
発売中

カフェ・ラウンジ系アーティストの中でも最もポピュラリティを備えたparis matchの3rdアルバムは、デジタル機器を用いつつ、聴こえてくる音はとてもオーガニック。シングル「saturday」「deep inside」を収録した今作は、夏にとても合うアルバムだ。

【paris match オフィシャルウェブサイト】http://www.coolism.com/parismatch/

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