キャロル・キング

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キャロル・キング

あの名作『つづれおり』から30年…
永遠の"Natural Woman"キャロル・キングから届けられたニュー・アルバムは、
現在の彼女自身を忠実に表現した、音楽好きの誰もが感銘を受ける最高の1枚です。

(初出『Groovin'』2002年6月25日号)

キャロル・キング-A.jpg キャロル・キングといえばまず浮かぶのが、全世界で2000万枚を売り上げたアルバム『つづれおり』だろう。ジェイムス・テイラーの『ファイアー・アンド・レイン』と共に、米国の音楽シーンにシンガー・ソングライターの時代の到来を告げた、不滅の金字塔的なアルバムである。
 71年2月に彼女のソロ・アルバム第2弾として発売されたこの『つづれおり』は、15週間No.1をキープし、計302週に渡りチャート・イン、という離れ業を成し遂げた。その年のグラミー賞では、主要4部門(ベスト・アルバム賞、最優秀女性ヴォーカル・パフォーマンス賞、ベスト・シングル賞、ベスト・ソング賞)を受賞という、それまでに前例が無かった結果になった為、シンガー・ソング・ライターとしてのキャロル・キングがさらに広く世に知られることになった。
 何故このアルバムがこれほど売れたのか?当時(60年代末〜70年初頭)の米国といえば、多くの国民がべトナム戦争の無意味さを噛み締め、空虚感が社会全体を支配していた時代。そんな社会状況だからこそ米国民には、傷つき、疲弊し切った心を癒してくれる内省的な音楽が必要だった。『つづれおり』はそんな人々の心をがっちり掴んだのだ。そして、米国の音楽シーンには"シンガー・ソングライターの時代"が到来、一大ムーヴメントへと発展していったのである。
 さて、今作『ラヴ・メイクス・ザ・ワールド』は、実に7年振りとなる新作だ。参加ミュージシャンは、セリーヌ・ディオン、ベイビーフェイス、ウィントン・マルサリス、スティーヴン・タイラー、k.d.ラング等。ゲストも豪華だが、何よりもアルバムの内容が素晴らしい。60年代初めからソングライターとして活躍、数多くのアーティストにヒット曲を提供し続け、あの『つづれおり』から30年も経っているというのに、全く感性の衰えが感じられない。歌声に関しても、あの瑞々しさは今作でも健在。全く驚きである。彼女が創作活動を制約されるのを嫌って、今作をメジャー・レーベルではなく、個人レーベル(ROKINGALE RECORDS)からリリースした事も大いに反映されているのだろうが、このアルバムの中には「永遠のナチュラル・ウーマン」キャロル・キングがひっそりと、しかし、力強く佇んでいる。ファンならずとも、音楽好きの誰もが感銘を受ける内容で、今現在の彼女自身を忠実に表現した心打つ1枚となっている。そして、あのシンガー・ソング・ライター全盛の時代を共に過ごした方々はきっと70年代に回帰したかのような感覚を、(僕もそうだが)リアルタイムではない世代の方々は、少しだけあの古き良き時代を垣間見たような感覚を覚えるだろう。
 数ある女性ヴォーカル・アルバムの中でも屈指の出来で、どんな形容詞を並べたところで賛美しきれない魅力を内包している今作『ラヴ・メイクス・ザ・ワールド』。聴く者すべてを魅了する輝きを放ち、品位溢れる作風を示したこのような作品に、2002年という時代に出会えた僕らは本当に幸せだと思う。

Text by 大林 誠(大仁店)

『ラヴ・メイクス・ザ・ワールド』
キャロル・キング-J.jpg




CD
Sony Records Int'l
SICP-156
¥2,400(税抜)
発売中

参加ゲストの豪華さもさることながら、なによりもアルバムの内容が素晴らしく、"永遠のナチュラル・ウーマン"キャロル・キングの世界観が堪能出来る、心打つ1枚となっています。『つづれおり』ファンのみならず、すべての音楽ファンに聴いてもらいたい作品です。

【キャロル・キング 日本オフィシャルサイト】http://www.sonymusic.co.jp/Music/International/Arch/ES/CaroleKing/

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