オノ・アヤコ

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オノ・アヤコ

2002年夏、1人の歌姫がデビューする。透明感の中にも毒のある歌声は、
独特の存在感を放ち、時代を先導していく可能性に溢れている。
彼女の名はオノ・アヤコ。

(初出『Groovin'』2002年7月25日号)

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 歌は世に連れ、世は歌に連れ、などと言われているが、確かに音楽にはかなりの高配合で時代性という要素が含まれている。例えば昭和歌謡やGS、70年代フォーク、洋楽だとMTV全盛期の80'sポップスなどは、一聴するだけでその時代がわかってしまうことが多い。もちろん、レコーディング機器の発達やサンプリングの出現といった、技術的進化が及ぼした影響もあるとは思う。また、エンターテイメントである以上、流行というやつも当然ある。だが、時代を判別するためのキーワードはそれだけではない。音楽には必ず、その時代に生きる人の気分や、社会のムードが反映されている。つまり時代の空気も一緒に録音されているのだ。さくらと一郎の「昭和枯れすすき」しかり、マドンナの「ライク・ア・ヴァージン」しかりである。そして、それがポピュラー・ミュージックの重要な役割でもあるし、宿命だと思うのだ。
 さて、8月7日にマキシ・シングル『TWO OF US』でデビューを飾るオノ・アヤコ。華やかさだけが先行しているような百花繚乱の女性ヴォーカリスト・ブームの中にあって、彼女はとても重要なポップス・シンガーになる可能性を持っている。それは彼女が、前に述べた"時代性"というやつを後追いするのではなく、先導して作っていける感性と才能を備えているからだ。
 まずそのための大きな武器となるのが、彼女のヴォーカルが持つポピュラリティだろう。透明感があるのに、その内部に毒を隠し持っているかのような歌声は、今という混沌とした時代を表現するのに相応しいし、"きれい"一辺倒でないところも人間的で受け入れられやすい。それにただ美しいだけでなく、チクリと心を刺すようなトゲがあるからこそ生まれるリアリティもあるだろう。とにかく不思議な存在感のある声質である。
 また彼女を取り囲む制作陣も、シーンの最前線で時代の音楽を作り出している強者たちで固められている。サウンド・プロデュースには、SMAPの「SHAKE」「ダイナマイト」「らいおんハート」等で知られるコモリタミノル氏を迎えた。こうして曲を挙げただけで他に何の説明も要らないような気もするが、現代の日本の音楽シーンを陰でけん引する、辣腕ポピュラー・ミュージック職人と言えるだろう。今作ではコモリタ氏独特のバランス感覚でもって、陰と陽、懐かしさと新しさを楽曲内に同居させている。情感溢れるメロディに、お得意のエレクトロ・ポップなサウンドを融合させた手腕はさすがである。作詞は、BoA等の作品を手がける渡辺なつみ氏が手がけ、彼女の声が持つ透明感と毒を上手く引き出し、オノ・アヤコの内面とシンクロした世界観を作り上げている。こうして出来上がった楽曲は、まさに"今"の空気が凝縮されているのだ。
 このマキシ・シングルが彼女のデビュー作となるわけだが、熱のこもった彼女の歌声からは、初々しさや瑞々しさと一緒に、ヴォーカリストとしての野心も感じ取ることができるだろう。そういえば時代を先導していく人は大体において野心家である。オノ・アヤコ、これからも注意が必要なアーティストだ。

Text by 鮎川夕子

『TWO OF US』
オノ・アヤコ-J.jpg



Maxi Single
バップ
VPCC-82166
¥1,000(税抜)
8月7日発売

デビュー前から日本人として初めて中国の国営企業のCMに起用されるなど、早くも注目を集めているオノ・アヤコのデビュー・マキシ・シングル。今作は、日本テレビ系全国ネットドラマ「東京庭付き一戸建て」(水曜22:00〜)の主題歌としてオンエア中。

【小野綾子 Official Website】http://www.vap.co.jp/ayako/

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