コールドプレイ

4人は大学寮のベッドの上で曲を作り始めた。
数年後、デビュー・アルバムを500万枚売ることになろうとは、
その時誰も予想していなかった。

（初出『Groovin'』2002年7月25日号）

　コールドプレイの「イエロー」は1999年屈指のヒット曲だ。「君のためなら血を流そう、体が乾ききるまで」と歌う、センティメンタルなラヴ・ソング。これがまず本国イギリスのあらゆる音楽ファンの心を掴んだ。この曲が収録されたデビュー・アルバム『パラシューツ』は全英チャート初登場1位。「驚いたよ。20位くらいに入ればいいなと思っていたら、1位だったんだよ」と、クリス・マーティンがサマーソニックの楽屋で語っていたのは1999年の夏の話だ。バンドはこの後、アメリカへ進出。クリスが1人で夜明けの海辺を歩き、歌うだけのプロモーション・ビデオがMTVなどの音楽チャンネルでヘヴィ・ローテーションされた。決して派手ではないこのバンド…しかし確かなソングライティング能力を持つこのバンド…は急速に世界に認められた。アルバムはイギリス、アメリカのチャートに1年以上とどまり、現在までに世界で500万枚のセールスを記録した。これはレディオヘッドを上回る数字である。また、イギリスでの各賞はもちろん、米グラミーも受賞（ベスト・オルタナティヴ・ミュージック・アルバム）。彼らは、イギリスで最もインタビューするのが困難なバンドとなった。しかし日本でのライヴは、いまだに2年前のサマーソニック、東京・大阪での各1回きりである。
　静かに、そして急速に世界に広まっていったこのバンドが、セカンド・アルバム『静寂の世界』を完成させた。前作と同じく優しく、そして前作より力強い、真摯なロック・アルバムである。クリス・マーティンのヴォーカルはストレートにハートに届き、ジョニー・バックランドのギターがロックのダイナミズムを生む。叫ばなくてもメッセージは伝わる。音楽が持つ力をすべての人が再確認できるアルバムである。