アース・ウインド&ファイアー

大ヒットしたリミックス・アルバム『Jackson 5 Remixes』の興奮が再び…。
Soul Sourceが贈る、アース・ウインド&ファイアーのリミックス・アルバム！

（初出『Groovin'』2002年7月25日号）

　テレビやラジオから流れてくる音楽の中に、ディスコ・クラシックなものを耳にする機会が心なしか増えている。もちろん、ディスコ、ソウルの定番ナンバーゆえに単純にオンエア回数が多いのかもしれない。それでも、明らかに波が来はじめている。決してブームというほどの規模ではないにしろ、注目を集めていることは確かだ。それは、ついこの間までドラマのエンディング・テーマとしてアース・ウインド＆ファイアーの「セプテンバー」が使われていたこと、パパイヤ鈴木がディスコ推進みたいなことを昨年あたりからやっていること、ディスコ・クラシックのコンピ盤が思いのほか多くリリースされていること等からも感じとれるはず。
　そんな中、先ほども名前の挙がったアース・ウインド＆ファイアーのリミックス・アルバムがリリースされることを知った。僕自身、基本的にオリジナルが一番だと思っているところもあり、リミックス・アルバムは少し苦手だ。（カヴァーとかはまた別だけどね…。）それに、古代と宇宙をミックスしたあのファンタジックな部分や、彼ら特有のファンキーなグルーヴといったアースの大切な魅力が損なわれてしまうのではないかと心配になった。今ハヤリの安易なトランス・ミックスを施されたつまらないものではないかとさえ思ってしまったほどだ。そこまで行かなくても、原曲のもつ魅力を無視したかのような、リミキサーのエゴが丸出しになった"ノリ"だけのリミックス・アルバムを想像していた。
　しかし、そんな思いもプロデューサー・クレジットを見て一瞬に吹っ飛んだ。なぜなら、このアルバムをプロデュースするのが"Soul Source"だったからだ。この"Soul Source"は、あのリミックス・アルバムの金字塔ともいうべき『Jackson 5 Remixes』を手がけ大ヒットさせた、箭内健一を中心としたプロジェクト・チームのこと。そう、あの『Jackson 5 Remixes』の興奮が再びなのである。そして、ジャクソン・ファイヴ以上に数多くのヒット曲をもち、認知度、人気の高さにおいて不動の位置を誇っているアースをどのように料理するか、どんなリミキサー、アーティストが参加するのか楽しみだった。期待いっぱい、胸いっぱいとはまさにこのことだ。
　さて、気になる内容であるが、「セプテンバー」に「シャイニング・スター」、「ブギー・ワンダーランド」に「レッツ・グルーヴ」、そして「宇宙のファンタジー」など、まさにベストな選曲になっている。そして、それらを料理するリミキサー、アーティストは、FPM（Fantastic Plastic Machine）、大沢伸一（Mondo Grosso）、松浦俊夫、DJ JIN（Rhymester）といった日本勢をはじめ、ニューヨーク・ハウス界最強のDJ/プロデューサー・チームであるMasters At Workや、ロンドンのジャズ・ハウス系DJ/クリエイターのフィル・アッシャー、ハウス界の大御所でリエディットの神様とも言われているダニー・クリヴィットら、『Jackson 5 Remixes』がきっかけとなった強力なコネクションによって創り上げられている。
　本作は、個性的なリミキサーたちがそれぞれのスタイルでもって、原曲の魅力を損なわず、かつ自らの味を出した好リミックス・アルバムになっている。それぞれのリミキサー・ファンはもちろん、ディスコ・クラシック・ファン、アース・ファン、そして心地良いノリを求めている音楽ファンすべてにオススメできる1枚だ。

Text by 常盤安信（横須賀佐原店）