小柳ゆき

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小柳ゆき

BOYZⅡMENとのコラボレートで活動の幅を更に広げた小柳ゆき。
大人の女の強さとしたたかさ、そして本能と理性のせめぎ合い・・・
成熟度を増したニュー・アルバムが遂に完成!

(初出『Groovin'』2002年8月25日号)

小柳ゆき-A.jpg ハテ、彼女ってこんなに艶っぽかったっけ…?それが小柳ゆきのニュー・アルバムを聴いての率直な感想。確かに今までの作品も独特の芳香があったけれども、今作はそれに増して官能的だ。"そばに来て比べてみて/あなたの周りの女と一緒にしないで (「HIT ON」)"と情念を露にしたかと思えば、"ためらいは癖になり/手紙を書くのも怖くなる(「君がいた夏」)"と少女のようにつぶやく。恋愛は身体(本能)だけでは出来ないし、心(理性)だけでも出来ない…彼女の歌からはそんな"女の業"が匂い立つ。演歌の世界にも通じると言ったら反感をかうだろうか?
 彼女のファンの年齢層がどの位なのか正確なところはわからないが、私の周辺では20代後半〜30代の女性の支持者が多い。ママゴト遊びのような10代の恋愛を通過して、修羅場のひとつやふたつを経験し、必死に縫い合わせた心の傷を持つ三十路女(&もうすぐ三十路女)には、彼女の歌はリアリティをもって響くはずである。そして、そういう酸いも甘いもかみ分けた女の支持を得られる歌こそが本物のラヴ・ソングなのだと思う。それにしても、確か彼女はまだ20歳。この成熟した恋愛感覚はどうだろう!まったく頭がさがる。彼女は、本能と理性のバランスが保てる"大人の女"なんだと確信。
 さて、サウンドについて触れていきたいと思う。洋楽カヴァー・アルバムとしては初のオリコン1位を獲得した『Koyanagi the Covers PRODUCT 1』に始まり、ホイットニー・ヒューストンのプロデューサーとしても知られるR&Bシーンの重鎮、Kashifとのデュエット、そしてBOYZⅡMENのネイザン・モリスとショーン・ストックマンとのコラボレート・アルバム『intimacy』、記憶に新しいワールドカップ決勝前夜祭イベントでのBOYZ ⅡMENとの共演ライヴなど、常に洋楽リスナーを意識したアプローチでキャリアを積んできた彼女だが、それは決して頭デッカチな洋楽指向一辺倒なものではない。…というより、どう転んでもそうなり得ないと言った方がいいのかもしれない。例えどんな大物外人とコラボレートしようが、どんな洋楽曲をカヴァーしようが、コヤナギユキというフィルターを通すと、不思議なことにたちまちJ-POPSとしての色気が出てくるのだ。そこが彼女の最大の魅力ではないかと睨む。今作でももちろん、彼女のルーツである米国R&Bのエッセンスは散りばめられてはいるが、あくまで"日本語の歌モノが持つ粋"を忘れてはいない。そう、2、3度聴いたらサラっと口ずさめる、そんな粋。実はコレってとても重要なことなんじゃないかと思う。J-R&Bと呼ばれるアーティストの中には、いわゆる洋モノ的なグルーヴを重視するあまり、何回聴いても正確に歌えない難解な曲があってビックリしてしまうことがあるけれど(私のリズム感に問題があるのか?)、やっぱり好きな曲は感じるだけじゃなく、自分自身で消化したい。彼女の曲は、そんな根本的な欲求を満たしてくれるのだ。
 今作ではボーナス・トラックとして、ビル・ウィザーズの「Lean on me」のカヴァーを収録している。言わずと知れたソウルの名曲だが、例えばこの曲をまったく知らない、または洋楽をまったく聴かない人の耳にもこのカヴァーは説得力を持って届くであろう。それは誰もが出来る芸当ではないし、歌唱力うんぬんの問題でもないと思う。言うならばもっと精神的な部分の揺るぎない自信、そして日本人シンガーとしてのプライドの結晶のような気がする。彼女の力量は計り知れない、と改めて実感した。

Text by 池 佐和子

『buddy』
小柳ゆき-J.jpg




CD
DREAM MACHINE/イーストウエスト・ジャパン
HDCA-10108
¥2,913(税抜)
発売中

日本テレビ系ドラマ「探偵家族」主題歌「Endless」を始め、ヒット・シングル「remain〜心の鍵」「HIT ON」を含む待望の4thアルバム。幅広いサウンド・ヴァリエーションに彩られた、今までにないポップ感覚溢れる仕上がり。動と静を縦横無尽に行き来するヴォーカルの表現力は彼女ならでは。

【小柳ゆき OFFICIAL WEB SITE】http://www.yuki-koyanagi.jp/

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