河村隆一

ARTIST PICK UP

河村隆一

1997年から2002年までのソロ・ワークスを凝縮!
河村隆一初のベスト・アルバムは、
CD&DVDに彼が書き下ろしたエッセイ集が入ったスペシャル・アイテム!

(初出『Groovin'』2002年9月25日号)

河村隆一-A.jpg もはや"河村隆一"というオリジナル・ブランドだと言っていいのかもしれない。こう書くと、今流行りの裏原系を連想したりなんかして、いかにも時流に乗った感じがしてしまうが、既成の枠にとどまらない新しい個性を基本に様々なアイテムを生み出す、という意味でだ。フィーチャリング・ヴォーカリストを迎えたRKSとしての制作活動は、いわゆるダブルネームというやつに当てはまるだろうし、上原多香子から氷川きよしまでもを手掛けた、いわずもがなのプロデュース能力、そして俳優活動などは、異業種コラボレーションとも取れる。もちろんアーティストが、俳優、タレントとマルチな活動を行うのは、昨今ではさして珍しい事ではないだろう。しかし、その中に一貫したオリジナリティがある人物はめったにいない。その点では、彼はどのフィールドにいても、ひとつの確かな個性を放っている。試しにそれらを隈無くチェックしてみてほしい。そのどこかに河村隆一というオリジナルの刻印が見つけられるはずだ。
 彼の基本部分になっている音楽に焦点を当て活動を振り返ってみると、LUNA SEA時代のRYUICHIはバンドを構成する一要素に徹していたように思う。しかし、決して自分を殺していたわけではなく、バンドにおける自分の役割を完璧に果たしていたのだろう。LUNA SEA自体そういう性質のバンドであったし、あの鉄壁のチームワークがあってこそ生まれた音楽でもあったと思う。その後バンドが一時活動を休止し、河村隆一としてのソロ活動をスタート。最初の作品となったシングル「I love you」を聴いた時の衝撃を私は今も覚えている。どこまでもポップでしなやかでロマンチック、恋愛を真正面から捉えた歌詞や軽やかなメロディ・ライン。この1曲で河村隆一の本質見たり!と、勝手に思い込んでいた私だが、その浅はかさを恥じる時はすぐにやってきた。2ndシングル「Glass」は、慈悲深ささえ感じる荘厳なバラードだった。そこにはロックだとかポップスだとかを超越した、独自の世界が広がっていて、サウンド云々を論じるのではなく、その世界の空気を感じることが、ソロ・アーティスト"河村隆一"の音楽へのパスポートなのだと気付いた。その後私が、彼の作り出す世界を頻繁に訪れるようになったのは言うまでもない。
 さて、そんな河村隆一の初のベスト・アルバムとなる今作は、ソロ活動を開始した1997年〜現在までに発表した作品の中からセレクトされた楽曲が収録されている。さらに彼のディレクションによるビデオ・クリップを収録したDVDと書き下ろしのエッセイ集がついた、異例のパッケージとなる。活字、映像、サウンド、あらゆる角度から彼の存在を再確認できる作品であると共に、河村隆一の歴史の第1章とでも言おうか、ひとつの区切り的な意味合いも込められているように思う。
 映画「ピカレスク」では、昭和の文豪、太宰治を演じた河村隆一。ナイーヴな性格や作品に対するストイックな姿勢、独自の美学を持っているところ、はたまた女性が放っておかないルックスなど、考えてみると彼には太宰像と重なる部分がいくつかある。また、作品のみならず、その人物像が語られることが多いのも共通点と言えるだろう。そして2人の根源にあるのは、衆人が注目せざるを得ない圧倒的な個性と、それを作品に反映させる才能なのだと思う。河村隆一のオリジナリティが凝縮された今作、河村隆一フリークはもちろん、すべてのJ-POPファンにお薦めしたいスペシャル・アイテムだ。

Text by 鮎川夕子(編集部)

『very best of songs…』
河村隆一-J.jpg



CD+DVD+エッセイ集
gai RECORDS
VIZL-67
¥3,300(税抜)
9月26日発売

1997年から2002年までのソロ・ワークスを凝縮した初のベスト・アルバム。本作でしか見ることが出来ない、彼自身のディレクションによる「Sugar Lady」(ballad version)を含む4曲のビデオ・クリップを収録したDVDに加え、全48ページの書き下ろしエッセイ集が入ったスペシャル・アイテム!

【RYUICHI KAWAMURA Official Website】www.kawamura-fc.com/

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