木住野佳子

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木住野佳子

名門GRPの人気ジャズ・ピアニスト、
木住野佳子2年振りの新作は、優しく、心地よく、
そしてエレガントに聴かせる初の全編ボサノヴァ・アルバム!

(初出『Groovin'』2002年9月25日号)

 95年、フュージョン/ジャズの名門GRPレーベルと日本人女性アーティストとして初めて契約した木住野佳子。最近ではorange pekoeの新作への参加や、江角マキコ、豊川悦司主演映画「命」のサウンドトラックへの参加と活動の幅を広げているが、そんな彼女の2年振りとなる新作がこの『シエスタ』である。
 前作『テンダネス〜マイ・バラード』は、デイブ・ウェックルとトム・ケネディの超強力リズム隊を従えてのしっとりとしたバラード集で、繊細なピアノ・タッチと優しい音色が持ち味である彼女の魅力が存分に楽しめる作品であった。この年の1月に行われたブルーノート東京での公演も超満員の観客の前で素晴らしいパフォーマンスを見せてくれていたのだが、彼女の"優しさ"はその演奏からだけではなく、ステージ上でのちょっとしたしぐさや、とても上品でゆったりとしたMCからも十分に感じ取ることができた。
 そして今作の『シエスタ』では、初めてゲスト・ヴォーカリストを迎えている点も大きな聴き所。「アメイジング・グレイス」や「ファイナル・ファンタジーⅣ」エンディング・テーマ等でも有名な白鳥英美子が「シエスタ」と「コルコバード」の2曲に参加。透明感のある歌声が上手く溶け合い、素晴らしく心地よいボサノヴァに仕上がっている。
 ライヴでもお馴染みの軽快な「プリマヴェ−ラ」を含むオリジナルが6曲収録され、その他にもアントニオ・カルロス・ジョビン、セルジオ・メンデス、マイケル・フランクスをはじめ、名手マーク・ジョンソンの素晴らしいウッド・ベースが聴けるビートルズの「ノルウェーの森」などカヴァーの選曲も秀逸。どれも粒ぞろいのナンバーが揃った、木住野ファンならずとも十分に堪能できる内容だ。
 特にオリジナル曲「プレイ・フォー・ゼム」は、昨年ニューヨークでのテロ事件の時マンハッタンに居合わせた木住野が人の命の尊さなど様々な事を考え、人々と平和への祈り、そして"優しさ"を伝えたくて書いた曲。アルバムのクロージング・ナンバーにふさわしい彼女の平和への思いがいっぱい詰まった、しっとりとしたソロ・ピアノ曲だ。全曲通して聴いてみると、何とも言えない心地よさを覚えるのは私だけではないはず。なんだか"優しい"気持ちになれる、そんなアルバムだ。

Text by 堀尾康弘(東越谷店)

『シエスタ』
木住野佳子-J.jpg




CD
ユニバーサル ジャズ
UCCJ-2021
¥2,857(税抜)
発売中

前作『テンダネス』から2年振り、待望のオリジナル・アルバムが完成。ゲスト・ヴォーカリストとして白鳥英美子が2曲に参加。透明感のある歌声と木住野佳子の繊細なタッチから生まれる優しいピアノの音色が心地よく溶け合った、とてもリラックスできる楽曲に仕上がっている。

【木住野佳子 公式サイト】www.kishino.net/

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