坂本龍一

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坂本龍一

"全部入ってりゃいんでしょ!"(坂本龍一)
本人が全面参加したベスト盤が3タイトル一挙に同時発売。
彼の音楽の多面性が表れた、まさに「坂本龍一大全集」だ!!

(初出『Groovin'』2002年10月25日号)

坂本龍一-A.jpg 坂本龍一が初めて全面参加して編集されたベスト・アルバム3枚が10月23日に同時リリースされた。それぞれ『US』『UF』『CM/TV』というタイトルが付けられている。順を追って説明していこう。
 まず『US』は「Ultimate Solo」、いわゆるソロ・ワークス集である。坂本はソロ・デビュー作『千のナイフ』をYMO結成と同じ78年に発表している。その後YMOの世界的成功や映画音楽などの仕事で培った様々な思想、テクノロジー等をダイレクトに自身の作品に反映させていくが、この『US』はそんなソロ名義で発表した膨大なアルバム収録曲、シングル曲の中から全34曲を2枚組で収録している。実験色の強いシンセサイザー・ミュージックから、80年代ニュー・ウェーヴ色濃いもの、比較的ポップなYMO直後の作品や、アジア的旋律が美しいエレクトリックな民族音楽など、常に"時代"を横目で睨みながらも、好奇心の赴くままに変化していった作風の変遷を容易に辿れるのが嬉しい作品集だ。
 『UF』(「Ultimate Films」)はフィルム・ワークスを集めた作品集。彼の名前を世界的に轟かせたのは『戦場のメリークリスマス』や『ラスト・エンペラー』といった海外資本の映画音楽を担当したことによる。特に『ラスト・エンペラー』ではアカデミー賞オリジナル作曲賞受賞という、日本人としては稀にみる成功を手にしているのはご存じのとおり。その後も2本のベルトリッチ監督作品の音楽を手掛けていて、このアルバムでも聴きどころはそこだろう。荘厳な映像世界を表現したそれらの曲の他にも、『Snake Eyes』や『ネオアミスの翼』といった娯楽大作やアニメーションの伴奏も収録しており、『戦メリ』しか知らない人はぜひ聴いて頂きたい。
 『CM/TV』は文字通り、CMやテレビ番組のオープニング等で使用された楽曲を集めた作品集。坂本龍一という音楽家をそんなに追いかけていない人にも、逆に相当コアなファンにも両方にウケそうなのがこの『CM/TV』だ。肩肘張らずに「あ、これも教授だったのね」と楽しむことができる。上記の2枚が天才の残した軌跡だとしたら、これは職人の技100連発みたいな感じだろうか。
 3枚とも過去に数枚出ているベスト盤とは本人の関わり具合が決定的に違うということ、またアルファやヴァージン、フォーライフ時代の一部のアルバムはすでに廃盤となっていることなどを踏まえると、これはぜひ持っておきたいアイテムだ。天才特有の移り気なる好奇心や、アカデミックな知識や才能の閃きが形作った音楽の多面体を、同時に俯瞰できる絶好の機会なのだから。

Text by 高瀬康一(編集部)

『US』
坂本龍一/US-J.jpg
CD(2枚組)
ワーナーミュージック・ジャパン
WPC6-10241〜2
¥3,600(税抜)
発売中

78年のデビュー・アルバム『千のナイフ』から、2000年の『AUDIO LIFE』までのソロ作品から厳選された34曲を2枚に収録した作品集。1枚のアルバムからそれぞれ2〜3曲が選ばれており、教授の長いソロ・ワークスの変遷を手軽に辿ることができる。

『UF』
坂本龍一/UF-J.jpg
CD
ワーナーミュージック・ジャパン
WPC6-10243
¥2,800(税抜)
発売中

フィルム・ワークスを集めた作品集。映画との関わりの出発点となった『戦メリ』のテーマ「Merry Christmas Mr.Lawrence」のメロディはあまりにも有名。ベルトリッチ監督の3作品の他、『小猫物語』『鉄道員』『御法度』などの日本作品のOSTも手掛けている。全20曲収録。

『CM/TV』
坂本龍一/CM/TV-J.jpg
CD
ワーナーミュージック・ジャパン
WPC6-10244
¥2,800(税抜)
発売中

CMやテレビ番組のオープニング等で使用された楽曲を集めた作品集。職人としての技の数々が堪能できる1枚。99年に大ヒットした「energy flow」はもちろん、一流企業の社歌や、日本では流れていないCM曲、ボツ曲などレア音源も収録の全50曲。

【坂本龍一 公式サイト】http://www.sitesakamoto.com/

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