U2

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U2

ロック・ミュージックに革命をもたらしたU2。
全世界で1370万枚以上のセールスを残した第1弾に続く、
90年代から最新作に至る足跡を刻んだベスト盤。

(初出『Groovin'』2002年10月25日号)

U2-A.jpg ある日の夕方に某テレビ番組をなにげなく観ていると、チェックのベストを着たギタリストと真っ黒なTシャツを着たヴォーカリストの姿が印象的な4人組が、炎の中で白い旗を振って「SUNDAY BLOODY SUNDAY」という曲を演奏していた(後でわかったのだが、これはアメリカ・コロラド州レッド・ロック・アンフィシアターで収録されたもので「ブラッド・レッド・スカイ=四騎=」として発表されている)。この曲の内容は相当ヘヴィなものなのだが、それは当時、普通の日本人のガキであった私にわかりようもなく、ただこの4人組が発散する圧倒的なエネルギーに驚くだけだった。その後U2を知っていくにつれ、青臭さを隠そうともしない、まっすぐで誠実な姿勢が、理想を追い求めるパンク・スピリッツに通じている感じがして、一気に彼らは私の常食となった。
 当時のU2のオリジナリティは、楽曲をささえるリズム隊のアダム、ラリーを抜きには語れないが、何と言ってもボノの圧倒的なパフォーマンス(しかし、ショーマンという感じは決して受けない)と、エッジのデジタル・ディレイ、エコー等を駆使した超広がりのある、それまでには無いギター奏法だろう。時にはギターをぶらさげたままピアノも弾いてみせるエッジは、80年代前後に革新的奏法を生み出したハード・ロックとはまた別の可能性をロック・ギタリスト達に与えてくれた。当然影響を受けたフォロワーらしきバンドは数多く生まれたが、結局本家の進化についていける者は皆無だった。98年に発売された『ザ・ベスト・オブ U2 1980-1990』は、アルバム『魂の叫び』までの、U2が自身のルーツを探るまでの過程を収録した成長期の集大成ともいえる作品だったと思う。
 それではその後のU2の活動を確認してみよう。91年には『アクトン・ベイビー』を発表、その後すぐに突入した「Zoo TV」ツアー中にレコーディングした『ズーロッパ』を発表。そして97年には9枚目のアルバム『POP』をリリース。この時期のU2というと、アメリカンだった前作から打って変わって、デジタル・サウンドを取り入れたものというイメージで、正直なところ初期のリスナーには、この頃U2から一時離れた人もいたのではないだろうか?なにを隠そう私もその1人で、この3部作を棚から引っ張り出して普通に聴けるようになるまで結構な時間がかかったのだ。で、今回このベスト第2幕を通して聴いてはっきりわかりました。時間をかけないと分からない良さと訳があるのよ。これを聴かなきゃ現在のU2がたどり着いた所が理解できませんぜ旦那!そして、再びブライアン・イーノ、ダニエル・ラノワと共にレコーディングを行なった最新作『オール・ザット・ユー・キャント・リーヴ・ビハインド』は、初期の突っ走り感は影を潜めているものの、あのストレートさが戻ってきた感じだった。これまでアルバム3枚ごとに華麗なる変化を遂げた彼らなので、この路線がしばらく続くのだろうか?楽しみである。
 そして今回、U2が色々な意味で革新的だった90年代のベスト盤が登場する。ぜひ前作のベスト盤と併せて聴いて、その経緯をしっかり自分で確かめてほしい。そうそう、何よりも20年もオリジナル・メンバーって脅威!?

Text by 富田 聡(宇都宮戸祭店)

『ザ・ベスト・オブ U2 1990-2000』
U2-J.jpg


[初回限定盤]
CD(2枚組)+DVD
ユニバーサル インターナショナル
UICI-9003
¥3,300(税抜)
10月30日発売
※通常盤は¥2,427(税抜)で11月6日発売予定

第1弾が成長の過程ならば、今回は90年代、孤高のスーパー・バンドとなったU2の活躍編を刻んだベスト盤。新曲2曲収録に加え、初回盤のみ数々のリミックス、レア・トラックを収録したボーナスCD付きの2枚組、更にDVDまで付いてしまう超大判振る舞い!

【U2 日本オフィシャルサイト】http://www.universal-music.co.jp/u-pop/artist/u2/

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