市井紗耶香 in CUBIC-CROSS

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市井紗耶香 in CUBIC-CROSS

今年4月に「人生がもう始まってる」でデビューしてから半年。
新たな1歩を踏み出した市井紗耶香in CUBIC-CROSSの軌跡がここに。
ヒット・シングル3曲を含むファースト・アルバムが遂に完成。

(初出『Groovin'』2002年10月25日号)

市井沙耶香 in CUBIC-CROSS-A.jpg 可愛くてしっかり者の女の子、モーニング娘。の中の市井紗耶香は私にとってそんな印象だった。それは同性の私から見ても魅力的なキャラクターではあったけれど、私が彼女に一目置いていたのはそれだけが理由ではない。最初に気になったのは、歌っているときの笑顔の奥にある真剣な眼差し。ご存知のとおりモーニング娘。のダンスはかなりハード。だが、ステージを駆け回るように踊りながら、歌詞の世界、メロディの力、何より自分の声を何とか私たちに伝えようと、画面の中の彼女は必死だった。もちろんプロデューサーであるつんく氏が作り出した世界ではあるけれど、その歌声や表情には、何かを表現したい!という熱い思いがたぎっているようだった。
 だから彼女が「シンガー・ソングライターになりたい」とモーニング娘。を卒業したときには、淋しく思いながらも心のどこかで「ああ、やっぱり」という、妙に納得できる部分もあった。彼女は本格的に表現者への道を選んだのだな、と。しかしながら、こんなに若くして明確な目標を決めてしまうのは、危険なのでは?と、老婆心ながら心配だった。しかもそれを公言しているのだから、当然プレッシャーも大きくなるはず。迷い悩む日々もあるだろう、もしかしたら大きな挫折を味わうかもしれない。どういうわけか、妙に彼女に肩入れしている自分がいた。
 しかし、デビュー・シングル『人生がもう始まってる』は、そんな心配は全く杞憂だったと教えてくれた。そこには、プロデューサーにたいせー、ギターに吉澤直樹を迎え、市井紗耶香 in CUBIC-CROSSとして、のびのびと自分を表現する彼女の姿があった。「これがやりたかったんだ!」と彼女が叫んだ言葉に、スタートを合図するピストルが鳴ったときのような胸の高鳴りを覚えた。
 『失恋LOVEソング』『届け!恋のテレパシー』と発表されたシングルに続いて、いよいよ1stアルバムがリリースされる。プロデューサーであるたいせーを中心に制作された今作は、打ち込み色が強い楽曲が目立つが、どこかスタンダード・ソング的ともいえる、気取らない親しみやすさがある。それは彼女のキャラクターとも重なるのだが、とにかくフレンドリーなのだ。耳にもフレンドリー、唇にもフレンドリー、一緒に大きな口をあけて大笑いできる気の置けない友達のような音楽、というのはあまりに抽象的だろうか。それにしても、たいせーのデジタル・ポップな感覚と、吉澤直樹の硬質で扇情的なギター・サウンド、そして市井紗耶香のクリアで瑞々しい声質の3乗効果がこんな音空間を作るなんて、まったく予想もしなかった。
 さらに注目してほしいのは、彼女の成長記録とも青春日記ともいえる歌詞。今作では収録曲のほとんどを自身が手がけている。実は、15才にしてトップ・アイドル・グループの一員として常に注目を浴びながら過ごしてきた彼女だから、普通の女の子の気持ちはなかなか理解しづらいだろうなあ、なんて勝手に推測していたのだが、これが全く違った。失恋、彼氏、片思い…散りばめられたキーワードは、ごく普通の女の子が友達と交わす会話のようでもある。彼女はソロ・デビューまでの準備期間を、1人の女の子に立ち返り、有意義に過ごしていたに違いない。そしてそこで感じたものをそのままぶつけたのが、発表された3枚のシングルであり、このアルバムなのだ。
 今作はこれから続いていく彼女の音楽キャリアを思えば、ほんの序章にすぎない。進むべき道を見つけ、歩き出した彼女をこれからも温かく見守っていきたいと思う。

Text by 鮎川夕子(編集部)

『C:BOX』
市井紗耶香 in CUBIC-CROSS-J.jpg




CD
ピッコロタウン
PKCP-5011
¥2,913(税抜)
11月6日発売

ヒット・シングル「人生がもう始まってる」「失恋LOVEソング」「届け!恋のテレパシー」を含むファースト・アルバムが遂に完成。瑞々しいヴォーカルと彼女の手がけた歌詞にぜひ注目してほしい。初回盤のみタトゥシール封入。

【市井紗耶香 オフィシャルブログ】http://ameblo.jp/ichii-sayaka/

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