GONTITI

ARTIST PICK UP

GONTITI

聴き覚えのあるスタンダードなのにワクワク・ドキドキした。
聴き覚えのあるスタンダードなのに新鮮な感じがした、何故!?
〜それは"ゴンチチ"が音楽の魔法を使えるからさ。

(初出『Groovin'』2002年11月25日号)

 スタンダード、まさしく「定番」。音楽の場合は、古今東西、歴史の経年変化にも耐えて生き残った名曲がスタンダードの名にふさわしいはずです。それはたとえばトラッド(この場合、ファッションとしてのトラディショナル)における白いボタンダウン・シャツや三つボタンのネイヴィー・ブレザーにも似て基本中の基本です。
 今回のゴンチチのアルバムはそうしたスタンダード曲を、彼らの持つ、いろんな引き出しから引っ張り出し、上手く組み合わせ、着こなしの妙ならぬ編曲の妙を見せてくれました。
 レス・バクスターの「ジャングル・フラワー」のような通好みなものあり、フランク・シナトラの歌唱でグラミーを獲った「夜のストレンジャー」や、ビートルズ65年の名曲「ノルウェイの森」、個人的には泣ける映画の最右翼である「ひまわり」のテーマ(ヘンリー・マンシーニ作)、プラターズの名唱でお馴染みの「煙が目にしみる」などなど。一見ばらけている素材を上手くまとめています。
 そして全体に漂う静謐感は音楽の魔法をも感じさせてくれるのですが、何が良いかって、それは聴く人のTPOに合わせ自在に変化できる作品集であるってことでしょうか。つまり、食事や読書しながら聴けば上質なBGMとなって、決して料理の邪魔はせず、車に乗せて聴けば、安全運転をしたくなるセーフティー感あふれる音となり、彼女や彼氏といる時は会話が思わず弾む恋愛促進効果を生み、恋の特効薬とも成り得る、まさにイージー・リスニング(=個人的には最高に素敵な言葉だと思います)な1枚です。
 また世代を選ばないのも本作品の特徴的なポイントです。たとえば「テネシー・ワルツ」(今作にはインスト版とヴォーカル版の2種が収録されている)を聴けば、60代、70代の方達は江利チエミを想い、若かりし日々の自分を愛しく思うだろうし、その孫のような世代の20代の人間にとってはEGO-WRAPPIN'の中納良恵(Vocal)の参加が嬉しいところだろう。そのヴォーカル版の方は、音に彼女の声がぴったりはまった、秀逸な仕上がりとなっています。
 そういえば昨今の沖縄ブームのおかげか、ここに収められた沖縄スタンダード「安里屋ユンタ」が非常に近しく聴こえて来るのも新鮮な驚きです。
 また、このアルバムの感覚は、懐かしき昭和モダンにも通ずるところがあります。洒落ているのだけれど、なにか隠し味で醤油が使われているような、「和」の見えてくる奥が深い感じがするアルバム。付け焼き刃ではない「粋」な感覚が充填された1枚、(悩まずに)買いですよ。

Text by Brian.W(本社ソフト営業部MDM)

『A Magic Wand of "Standards"』
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CD
Leafage/ポニーキャニオン
PCCA-01792
¥3,000(税抜)
12月4日発売

『A Magic Wand of "Standards"』収録曲

01. Te Quiero Di Jieste テ・キエロ・デ・ヒエステ 02. Jungle Flower ジャングルフラワー 03. On The Street Where You Live 君住む街角 04. Brazil ブラジル 05. Love ラヴ 06. Strangers In The Night 夜のストレンジャー  07. Sunflower ひまわり 08. Deep Purple ディープパープル 09. Red Roses For A Blue Lady ブルーレディーに赤いバラを  10. Night And Day 夜も昼も 11. Norwegian Wood(The Bird Has Flown)ノルウェイの森  12. Tennessee Waltz テネシーワルツ 13. Sound Of Music サウンド オブ ミュージック 14. Menilmontant 〜 Mack The Knife メニルモンタン〜マック ザ ナイフ  15. The Syncopated Clock シンコペティッド・クロック 16. Smoke Gets In Your Eyes 煙が目にしみる 17. Asadoya Yunta 安里屋ユンタ 18. Tennessee Waltz [Vocal Version] テネシーワルツ Vocal:Yoshie Nakano(EGO-WRAPPIN')

選り抜きのスタンダード曲を、上手く組み合わせ、着こなしの妙ならぬ編曲の妙を見せる、まさにイージー・リスニングな1枚。ヴォーカル版の「テネシー・ワルツ」にはEGO-WRAPPIN'の中納良恵も参加。音楽の魔法を実感できる作品ともいえる。


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