ゴスペラーズ

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ゴスペラーズ

ゴスペラーズの5人が、はじめて自分達の声だけで紡ぎだした
オール・アカペラ・アルバムをついに完成させた!
甘く切ないゴスペラーズ・ワールドのタペストリーが、優しく心を包んでくれます。

(初出『Groovin'』2002年11月25日号)

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 楽曲を自らの声だけで紡ぎだすタペストリーとして表現するアカペラ。今ではアカペラ・ブームも手伝って一般的にはなってきているが、少し前までは日本ではかなりレアな音楽ジャンルとして捉えられていた。
 現在主流となっているのは、ヴォイス・パーカッションがリズムを奏でながらコーラスが伴奏し、それにリード・ヴォーカルが絡んでくるという、役割分担のはっきりした、いわばバンド形態のグループである。しかし、ゴスペラーズはそういったグループとは一線を画しているだろう。全員がリードをとれるスキルを持ったヴォーカリストであり、しかもそれぞれの個性が声だけでもちゃんと認識できるという、まさに典型的なヴォーカル・グループ・タイプといって良い。
 そして日本におけるヴォーカル・グループの見本ともいえるゴスペラーズが、ついにオール・アカペラ・アルバムを完成させた。今作を聴いてまず感じたことは、このアルバムに収録されている各楽曲の完成度の高さが、いずれも際立っているということだ。ほとんどがバラード・ナンバーで、しかも楽器によるフォローが一切ないにも関わらず、どの曲もドラマティックで、最後まで一気に聴かせてしまう勢いがみなぎっている。アカペラ曲というのは、持論ではあるが、初めから聴くものを引き込まなくてはいけない。そのためにはAメロなどにいわゆる捨てメロを配し、サビ部分で一気に盛り上げる、というようなギミックは使いづらい。イントロから曲の最後まで、良いメロディをふんだんに盛り込まないと素晴らしいアカペラ・ソングは生まれないのだ。しかもファースト・ヴァースから、セカンド、サードへと展開していくにつれて徐々に盛り上がりを演出するような、トラックによる援助は存在しない。コーラス・アレンジとリード・ヴォーカリストによるテクニックのみで楽曲を盛り上げていく必要がある。アカペラというのは、そんな悪条件のなかで曲を完成させなければならないのだ。
 にも関わらず、見事に質の高い曲がこのアルバムには詰まっている。黒沢薫の、どこまで出るのか?というぐらい澄みきったハイトーン・ヴォイスが堪能できる「潮騒」や、キー・チェンジを繰り返しながら盛り上がり、ラストの酒井雄二のテクニカルなアドリブでクライマックスへ向かう「めぐる想い」。そして極めつけはフジテレビ系ドラマ「天才柳沢教授の生活」の主題歌としてもうお馴染みのシングル曲「星屑の街」である。この曲はメロディの良さはもちろん、ゴスペル・ライクな荘厳なコーラス(このコーラス・アレンジがまた素晴らしい)から始まり、ゴスペラーズ5人全員がリード・ヴォーカルを入れ替わり立ち代り歌い継ぎ、曲を紡ぎあげていく様は、この5人でしかなし得ないマジックが存在することを立証している。
 クリスマスというイベントも控え、人肌恋しくなるこれからの季節、このゴスペラーズのニュー・アルバムをカップルで聴けば、どんな状況下でもすぐにロマンティック・モードに突入出来るはず。そんな、恋人たちの必携アイテムになること請け合いだ。

Text by 五味渕雅之(朝霞店)

『アカペラ』
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CD
Ki/oon Records
KSCL-500
¥2,913(税抜)
12月4日発売

ドラマの主題歌にもなったシングル「星屑の街」を収録したゴスペラーズ初のアカペラ・アルバム。彼ら全員の高い歌唱力と、ソング・ライティングの素晴らしさには圧倒される。初回盤のみ、フィルムが5枚重なったオーバーレイド・ジャケット仕様。

【ゴスペラーズ Official Site】http://www.5studio.net/

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