DEEN

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約2年半ぶりとなるDEENのオリジナル・アルバム『pray』が遂に完成!
デビュー10年目を迎えた彼らのさまざまな想いを、
音楽という姿の「祈り」へと昇華させた記念すべき作品だ。

(初出『Groovin'』2002年11月25日号)

DEEN-A.jpg 人が「祈る」という行為に身も心も捧げるのはどんな時だろう?あくまで自論なのだけれど、やはり辛い時や悲しい時、現状をよりよいものにしたいと強く感じる時なのではないかと思う。もし世界中の人々が120%幸せで不満など皆無の日々を過ごしていてたら、きっと誰も何事かを祈ったりしないんじゃないかなぁ。現状が充分ハッピーであれば、わざわざ何かを祈る必要などないのだから。
 現状が満足すべきものでないからこそ、人は祈りを捧げる。今まさに幸せな状態でないからこそ「幸せになりますように」と祈り、世界のいたるところで戦争が起こっているからこそ「戦争がなくなりますように」と祈る。「祈り」とは、裏を返せば、現実をありのままに映す鏡でもあるのだ…などというようなことを珍しく真剣に考えたのは、このアルバム『Pray』(祈り)と出逢ったのがきっかけだった。
 DEENにとって約2年半ぶりのオリジナル・アルバムとなる本作は、デビュー10年目を迎えた彼らがこれまでの活動を通して感じてきたさまざまな想いを、音楽という姿の「祈り」へと昇華させた記念すべき作品に仕上がっている。
 全13曲(通常盤は12曲)にはさまざまな祈りのシーンが描かれているのだけれど、本作を聴き込んでいくうちに3つの世界が大きく浮かび上がってくるのがわかる。それは、先行リリースされたシングル曲「Birthday eve 〜誰よりも早い愛の歌〜」やロマンティックなウェディング・ナンバー「I say to my love」に象徴される「愛する人への祈りの世界」、反戦のメッセージを込めた「空もハレルヤ」やジョン・レノンの「イマジン」を彷佛とさせる「Tears on Earth」などの「普遍的にして壮大な祈りの世界」、そしてDEEN流応援ソング「Take your hands」や自らの決意表明を歌った「Break it ! 」による「ポジティヴな人生を願う祈りの世界」だ。
 この3つの世界をしっかりと支えているのが「歌や曲には素晴らしいパワーがあるのだ」という彼らの強い信念。良い曲に出逢って思わずハッとしてしまった時の、あのなんともいえない高揚感。それは、音楽から大切な何かを貰った特別な瞬間でもあるのだ。大切な何か…それは勇気づけられる元気の源だったり、愛の大切さに気づかせてくれる暖かい光だったり。音楽が内包するこのとてつもないパワーをもってすれば、この世界をも変えることができるはず…そうした大きな大きな祈りが本作には込められているのである。
 ならば、彼らはこれまでどんな音楽にパワーを貰ってきたのだろうか?その答えは本作のサウンドの中にある。主に80年代前半に隆盛を極めたAORというジャンル、それに対するオマージュがアルバム全体から溢れ出ているのである。自らの原点ともいえるAORをDEEN流に消化し、オリジナリティー溢れる新しい音へと見事に転生させた本作は、30代以降のみなさまには涙モノ、又、当時を知らない世代には新鮮なトラックがテンコ盛り!複雑にして微妙なコード展開がグッとくる1曲目「magic」には初期のTOTOを、また美しいピアノの旋律からはじまるバラード・ナンバー「i...」にはシカゴの名曲「素直になれなくて」を重ね合わせてしまう人もきっと多いのでは?
 祈りの必要な世界はある意味不完全な世界だ。しかし、純粋な祈りは崇高な美しさを放ち、それがこの不完全な世界を変えるきっかけになることだってあるのだ。そうした真摯な想いに満ちた本作は、きっと大切な何かをあなたの心の中にもたらしてくれるはず。私はそう信じている。

Text by 秋野 櫻

『Pray』
DEEN-J.jpg




CD
BMGファンハウス
BVCR-11045
¥2,913(税抜)
発売中 

DEEN流AORに彩られた全13曲で構成された今作は、彼らの大きな大きな「祈り」に溢れた会心の1枚。初回盤のみ、99年の大ヒット曲「christmas time」の新録ア・カペラVersionをボーナス・トラックとして収録し、プレミアムキャンペーン2002応募はがき&クリスマス・メッセージカード封入。先着特典はスリップ・ケース。

【DEEN Home Page】http://www.deen.gr.jp/

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